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虹とチャンバラ|「古風堂々」藤原正彦

虹とチャンバラ|「古風堂々」藤原正彦

文・藤原正彦(作家・数学者) 私の父は「中学校の初年級までは立川文庫で育てられた」、とよく言っていた。大正時代を通じ200冊以上も刊行されるほどよく読まれた文庫である。猿飛佐助、堀部安兵衛、真田幸村、宮本武蔵、荒木又右衛門……などがぐいぐいと人を魅きつける筆致で描かれている。田舎の祖父の本棚にあったこれらを、6年生の頃に数冊ほど読み、その面白さにとりつかれた私は、よく似た『講談全集』が発刊されたのを幸い、次々にむさぼり読んだ。面白さだけでなく、講談の根っ子には武勇、正義、惻

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