文藝春秋digital

夜啼き鳥の歌|小野正嗣

夜啼き鳥の歌|小野正嗣

文・小野正嗣(小説家・仏文研究者) Kさんが亡くなってから6年になる。七回忌か。でも彼は日本の人ではなかった。 2005年の春、足かけ8年のフランス留学を終えて帰国した。そのうちの5年ほどは、パリから南に列車で1時間のオルレアンに暮らすエレーヌとクロードの夫妻の家での居候生活だった。 3階にある僕の部屋からは大きな中庭が見渡せた。フランスを発つ前日の早朝、開けた窓から薄闇を貫いて夜啼き鳥の声が聞こえてきた。驚きのあまり立ち尽くした。その美しい歌を耳にするのは初めてではな

スキ
11