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文藝春秋digital

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#平松洋子

『文藝春秋digital』2022年6月ラインナップ

■会員限定イベント●6月8日(水) ・新庄剛志「薬物使用」の過去 抜き打ち検査で「陽性」も、詳細は伏せられ、その年に引退―― 鷲田康(ジャーナリスト)+本誌取材班 ●6月10日(金) ・プーチンが最も殺したい男の告白 M・ホドルコフスキー(オリガルヒ・石油会社「ユコス」元代表)「ウクライナ侵攻は彼の個人的な動機から始まった」 ・「性暴力」私は負けなかった 卜田素代香(仮名)「暴行後『証拠が残るからシャワーを』と男が強いてきました」 ・新連載 外事警察秘録②「日本赤軍との闘い

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宇佐見りん「くるまの娘」“正しさ”で割り切れないもの 評者・平松洋子

“正しさ”で割り切れないもの小説でなければ伝え切れないものが、明確な輪郭と質量とともに存在している――読後、まっさきに脳裏に浮かんだ感情だ。『くるまの娘』が浮き上がらせるものの正体、それは、とかく「正しさ」を言い募り合う個人や社会のありさまでもある。 ある家族の壮絶な修羅が描かれる。ふだんは穏やかだが、スイッチが入ると残酷さを丸出しにして言葉と力の暴力をふるう父。かつては気丈だったが、脳梗塞を患い、健忘の後遺症とアルコール依存に苦しみ、しばしば錯乱する母。兄は家を去り、弟は

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平松洋子さんの「今月の必読書」……「フォンターネ 山小屋の生活」パオロ・コニェッティ

人生の深淵を見つめて生きる活力を失い、いわれのない虚無感とともにスランプに陥った30歳の春。「僕」は人間関係を断ち、すがる思いで山へ向かう。標高1900メートルのアルプス山中、ひとり籠もったのは、渓谷に建つ小さな山小屋だった。集落の名前はフォンターネ。 「山」をテーマに描くイタリア人作家パオロ・コニェッティが、みずからの葛藤を描く魂の再生の物語。1978年、ミラノ生まれのコニェッティは、40近い言語に訳された長編小説『帰れない山』(新潮クレスト・ブックス)で大きな評価を得る

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平松洋子さんの「今月の必読書」…『東京ルポルタージュ』石戸諭

あの頃の“首都”を剔出する先日、あるオリンピック関係者と話したときのこと。“次にオリンピックが巡ってくるとしても半世紀も先だから、終わったオリンピックの細部を検証するカネも時間も無駄”と言うのを聞いて唖然とし、現実の細部にこそ見る/知るべきものがあるのに、と唇を噛んだ。 本書は、副題が示す通り「疫病とオリンピックの街」を歩き、耳を澄まし、目を凝らしながら2020~21年の東京を描くルポルタージュだ。初出が週刊誌だと知れば、かつて1963~64年、つまり東京オリンピック前後、

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100年後まで読み継ぎたい100冊 平松洋子「日本人の精神にふれる」

文・平松洋子(作家、エッセイスト) 日本人の精神にふれる読み継ぎながら私が探りたいのは、“日本をつくってきたのはどういうひとたちか”ということ。その前提を踏まえ、まず宮本常一『忘れられた日本人』を挙げたい。宮本常一は昭和14年から全国津々浦々を歩いて常民の語りに耳を傾け、つぶさに記録した。本書に集積されるのは、西日本の村々に生きる古老の言葉と営み。明治・大正・昭和を通じ、日本人はこのようにして社会を形成、文化を継承してきた。そのなまなましいありさまによって、読む者は日本人の

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平松洋子さんの「今月の必読書」…『百間、まだ死なざるや 内田百間伝』

稀代の随筆家、知られざる実像虎視眈々、手練れの「日記読み」が、作家、内田百閒の姿を追う。日記という“歴史と人物の証言”に耳を澄ませ、糸目を細かく縫うようにして綴る気迫や執念。567ページにおよぶ大著に惹きつけられ、数日かけて一気に読み通した。 まず、すわ誤植か!? と一瞬ぎくりとさせるタイトル「百間」の表記について。一般には「百閒」と表記されるが、著者によれば、作家みずから「閒」の字を使い始めたのは昭和19年以降で、戦後から「閒」の字に変えた。著者が軸足を置くのは戦前・戦中

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平松洋子さんの「今月の必読書」…『もう一つの衣服、ホームウエア 家で着るアパレル史』

もっとも素肌に近いファッションの変遷トレンドより、着心地のよさ。コロナ禍中、外出がままならず、家にいる時間が増えた。自宅で長く過ごすようになれば、おのずと快適さを意識するようになるのは当然のなりゆきだろう。私にしても、この1年余り、新たに買い求めたのは家で着るものばかりだ。 本書の著者は、世界中のファッション動向を見続けてきたアパレル専門の記者。「ファッションや衣服から見落とされている」衣服として「ホームウェア」を位置づけ、光を当てる。確かに、ファッションの歴史や文化は熱心

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平松洋子さんの「今月の必読書」…『小池一子の現場』

アートをつうじ社会を揺さぶり続ける開拓者の足跡日本には小池一子がいる。 時代を切り拓いてきた女性を挙げるとき、まず小池一子の名前は外せない。一貫してクリエイティブの現場を歩みながら、ジェンダーを超え、仕事のジャンルを超え、アートや言葉をつうじて社会そのものに影響を与え続けてきた人物。85歳を迎える今年、「東京ビエンナーレ2020/2021」総合ディレクターを務め、さらに現役を更新する。 本書は、小池の全仕事を俯瞰するものだが、自伝やアーカイブとは一線を画する異色の出来映え

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コロナ下で読んだ「わたしのベスト3」 創造と共感|平松洋子

2020年春。ウィルスのパンデミックにさらされ、世界中が硬直した恐怖を長く記憶に留めておきたい。日本で緊急事態宣言が発出された4月7日、さまざまな仕事に就く77人に日記を依頼し、『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』が編まれた。発売は6月30日。書店の棚で見つけ、飛びつくようにして開くと、77の複雑な感情が渦巻いていた。50代のミニスーパー店員は、お客に釣銭をトレイに置けと無言で指示され、「お前が買ったのは、缶コーヒー一つだ。ならば自販機へ行け!」と胸中で毒づき、「自分が思って

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平松洋子さんの「今月の必読書」…『宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧』

アップル創業者が師と仰いだ「破戒僧」の生涯アップル創業者が師と仰いだ「破戒僧」の生涯「アップル」創業者スティーブ・ジョブズには、生涯を通じて師と仰いだ日本人の僧侶がいた。2011年、ジョブズの葬儀や埋葬も禅宗の様式で行われている。 禅僧、乙川弘文。1938年、新潟生まれ。2002年、5歳の娘とともにスイスで溺死。不慮の死を報されたジョブズはさめざめと泣き続けたという。ジョブズと弘文の交流は広く知られているが、いっぽう、弘文その人が詳らかにされたことはこれまでになかった。本書

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平松洋子さんの「今月の必読書」…『マツタケ 不確定な時代を生きる術』

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