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文藝春秋digital

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#川上弘美

文藝春秋digital読者の皆さまへ、編集長より最後のお願い【「文藝春秋 電子版」1年無料プランのご案内】

5月31日、「文藝春秋digital」はクローズいたします。 これまで「文藝春秋digital」をご愛読いただきまして、誠にありがとうございました。 先にもお知らせした通り、月刊文藝春秋のサブスクリプションは「文藝春秋 電子版」に一本化します。これまで「文藝春秋digital」をご愛読いただいた皆さまには、突然のお知らせになったことを、改めてお詫び申し上げます。 「文藝春秋digital」のサービスが終了しますと、6月から皆さまに最新記事をお届けできなくなってしまいます

川上弘美 ちょいと、あれだね 巻頭随筆

 文藝春秋誌が創刊された大正十二年はどんな年だったのだろうと考えているうちに、母方の祖父が残した覚書のことを思いだした。  祖父は、東京の本郷切通し(現在の湯島天神の大鳥居前)の数珠屋の二代目として、明治三十九年に生まれた。亡くなったのは昭和四十七年、享年六十六歳だった。覚書は、祖父の父、すなわちわたしの曽祖父にあたる清太郎が明治時代にその地で商売を始めるいきさつから書き起こされ、昭和二十五年までの記録で終わっていたはずだ。  祖父が、わたしはとても好きだった。生粋の東京

適切な距離|川上弘美

文・川上弘美(小説家) 最近、母と仲がいい。 実は、40年ほど前に実家から独立して以来、母とはあきらかに一定の距離があり続けていた。心理的にも、物理的にもだ。子どもが親から離れるのはごく健康的なことなので、距離があること自体は寿ぐべきことだが、磁石の同じ極が近づくと反発するように、どうやらわたしと母は、ある距離以内に近づくと、自然に反発して思いもよらぬ速さで互いから離れる、といった関係にあったようなのだ。 そのように距離をとらなければだめな間柄とは、つまり「不仲」なのか

俳句――川上弘美【全文公開】

大目玉群青に心冷えゆく夜なりけり 巻貝のうつろ聴きをる良夜かな 良夜なり太郎と次郎寝相似て 冷(すさ)まじや鰐の上(へ)渡り来しものも 肌寒やしやぶりて魚の大目玉 ばれをるも使ふ居留守や目白鳴く 車輛中すべて他人や秋深む 【編集部よりお知らせ】 文藝春秋は、皆さんの投稿を募集しています。「#みんなの文藝春秋」で、文藝春秋に掲載された記事への感想・疑問・要望、または記事(に取り上げられたテーマ)を題材としたエッセイ、コラム、小説……などをぜひお書きください。投稿形