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【14-政治】【菅新政権の課題】 新実力者・二階俊博は「金丸信」を超えるか|篠原文也

文・篠原文也(政治解説者)

「情の二階」

念願の幹事長ポストを手に入れて4年有余。2020年9月8日には、政治の師と仰ぐ田中角栄元首相を抜いて自民党幹事長の通算在任期間が歴代最長となった二階俊博。その後も菅義偉政権誕生の原動力になるなど、今や飛ぶ鳥を落とす勢いだが、長年二階氏を見てきた者としては、感慨深いものがある。

二階氏に初めて会ったのは、氏がまだ衆議院議員当選1回の時だった。以来かれこれ36年になろうか。初対面は実に強烈だった。

共通の知人の経済人から「ワシが見込んでいる若手政治家がいる。一度会ってみないか」と夜の会食に誘われたのがきっかけだ。当時私は一介の新聞記者にすぎなかったが、「面白そうだ」と思い、誘いに乗った。

ところが、悪いことに急に社の仕事が入り、会合に大幅に遅れる羽目となった。そこで、その経済人にあらかじめ電話を入れ、「先に始めておいてほしい」とお願いしておいて、なんとか仕事を片づけ1時間遅れで会食場所の赤坂の料亭に駆け付けた。

部屋に入って卓の上を見て驚いた。おしぼりとお茶しか出ていないではないか。私が経済人に「先に始めておいてほしいと連絡したじゃないですか」と文句を言うと、「そう言ったんだが、この人(二階氏)が待とうときかんのだよ」と言う。私は正直「参った」と思った。1回生にしてこの気配り。「並みの政治家ではないな」というのがその時の印象だ。

細やかな気配りをし、人心を掌握していく様は「大幹事長」になっても変わらない。会食相手には必ずお土産を持たせる。昔からの知り合いも大事にする。「こんな人まで」と思うような人でも、幹事長室に招き入れている。人間関係を大事にする「情の二階」と言われるゆえんだ。マスコミ各社に二階番の希望者が多いのも頷ける。

最後の党人派・「絶滅危惧種」

自民党の派閥が「同好会」化している中、唯一「体育会」系の色合いを持ち、結束力が強いのも、二階氏の親分肌と面倒見の良さによるところが大きい。

昔は義理人情を尊ぶこの手の党人派実力者は結構いて、独特の“生き様”や“体臭”を醸し出していたものだが、今ではすっかり少なくなり、二階氏は旧世代タイプの実力者の最後の生き残りの1人かもしれない。本人はそう言われることを嫌がっているが、私は氏のことを「絶滅危惧種」と呼んでいる。

一方で、二階氏はプラグマティストでもある。その点は菅首相と似通う。

普段は重心を低くし、口数少なく、ハラの内を見せない。猟官運動も一切しない。中国の『呻吟語』という書の中に、「深沈厚重なるは第一等の資質」とあるが、まさにそれを地で行く。

そして、夜な夜な「二階立て」どころか、「三階立て」「四階立て」の会食を重ねながら流れを見極めていく。菅首相は「政局観がズバ抜けている」と評しているが、二階氏の凄さは洞察力に長けていること。流れを読み切り、「いける」と判断すれば一気に勝負に出て「勝ち馬」を作る。菅氏擁立劇がその好例だ。

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