見出し画像

【31-国際】マスク義務化は革命!? コロナでフランス人は変わったか|中島さおり

文・中島さおり(フランス在住エッセイスト)

マスクを極端に嫌うフランス人

「もしもしマダム、マスクをつけてください」と、厳しい顔をして鉄道の乗務員が私に迫る。あら、いつからマスクをしていなかったかしらと思いながら、「スミマセン」と、おもむろにマスクを取り出すと、「次は罰金だよ」と目を剥いて乗務員は去って行った。

なにかこの頃、マスクをしていない人間に対して厳しい人がいる。9月初めに、閉鎖空間でのマスク着用義務を定めた政令が、個室でない執務室にも拡大適用された。同じ頃、全国の多くの自治体が、戸外でのマスク着用義務を定めた。見回せば、誰もがマスクをしている。マスクに慣れた日本人の私でも、ここまでみんながマスクで口を覆っているのは見たことがない。それが顔を隠すことを極端に嫌うフランスでのことなのだから、考えてみれば驚きだ。罰金を伴う法的強制の威力で、表面的なことかもしれないが、これは目に見える大きな変化だと思う。

話はズレるが、この一件で日本人に得があったのは、フランス人たちがようやく、「日本人がマスクをしているのは大気汚染のせいだ」「東京はよっぽど空気が悪いらしい」という珍説から抜け出したことだろう。「あれは、人に風邪をうつさないためにしているんだよ。こないだニュースでやってたじゃないか」などと、特に日本通でもない人がコメントしたりするようになった。これも変化といえば変化である。

さて、マスクはフランス人には本当は評判が悪い。「こんなもの、私は効き目がないと思いますね」と言う人は後を絶たない。知り合い同士であれば、「なんて暑っ苦しいんだ」「仕方がないからしてるけどね~」「私は実は効果は疑っているんだ」と誰もが言い合う。マスクの悪口は誰でも口にして良いらしい。見知らぬ男性がカフェで滔々(とうとう)と「そんなものは役に立たない」と「科学的見識」を述べたりするのに捕まることすらある。

マスク着用は前近代のしるし?

マスクが義務化されてしまったのは、罰金を伴わない推奨ではフランス人たちがマスクをしなかったからだ。ロックダウンが解けて解放されたフランス人たちは、マスクもあまりつけず、人との距離も取らず、バカンスに突入した。新型コロナ感染者の数は当然、増えた。どうしても再ロックダウンを避けたい政府は予防策としてのマスク着用を強化した。そうして出現したのが、現在の光景だ。

義務化されてしまってからというもの、フランス人たちは意外にも従順に(しぶしぶながら)マスクをつけて暮らしている。そして一旦これが正当となると、マスクをしていない人間を糾弾する人が出てきたり、警察が取り締まったりするのも変化であると思う。

この続きをみるには

この続き: 1,448文字 / 画像1枚
この記事が含まれているマガジンを購入する
ピンチをチャンスに変える力――それが「教養」だ! これ1つで、小論文対策をしたい高校生、レポートに困っている大学生、豊富な知識を身につけたいビジネスマンまで幅広くサポート。教養人に必須のマガジンです。

【12月1日配信スタート】毎日、朝晩2本の記事を配信。2021年の日本、そして世界はどうなる? 「文藝春秋」に各界の叡智が結集。コロナ禍で…

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
文藝春秋digital

記事へのご意見・ご感想をお待ちしています。「#みんなの文藝春秋」をつけてご自身のnoteにお書きください。編集部がマガジンにピックアップします。皆さんの投稿、お待ちしています!

ありがとうございます!
5
月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に、一流の作家や知識人による記事・論考を毎日配信。執筆陣のオンラインイベントも毎月開催中。月額900円で記事読み放題&イベント見放題のサービスです。