丸の内コンフィデンシャル

丸の内コンフィデンシャル<財界インサイドレポート>

日本の経済の中心地、東京・丸の内。敏腕経済記者たちが“マル秘”財界情報を覆面で執筆する。

★ヤフーとLINEの事情

 インターネット検索サービスヤフーの親会社Zホールディングス(ZHD、川邊健太郎社長兼CEO)と無料通信アプリ大手のLINE(出澤剛社長)が経営統合する。ZHDの親会社はソフトバンクグループ(孫正義会長兼社長)、LINEは韓国IT大手ネイバー(韓聖淑CEO)だ。

 ZHDの傘下にヤフーとLINEが入る形で、2020年10月までに統合完了を目指す。川邊社長は「米中に次ぐ第3極を作っていきたい」と述べ、プラットフォーマーと呼ばれる米国や中国の巨大IT企業に対抗していく考えを強調したが、両社にはそれぞれ“お家の事情”があったと内部関係者は語る。

「ヤフーは今、ボロボロで稼げるビジネスがない。最も存在感がある、ポータルサイトのヤフーニュースは日本最大のニュースサイトという確固たる地位を得ているので広告は入るが、儲けは薄い。力を入れているスマホ決済のペイペイ(中山一郎社長兼CEO)もキャンペーン費用がかさみ、まだ儲かっていない」

 知名度の高さとは裏腹に稼げるビジネスがないのだ。最近はM&Aに活路を見出したがうまくいかず、「焦った孫正義氏が動いた結果がファッション通販ZOZO(澤田宏太郎社長兼CEO)の買収。それだけでは物足りず今回の統合となった」(同前)。

 一方、LINEの事情も同じだ。親会社のネイバーの年間売り上げは5,000億円。「LINEはそのうち全体の4割にあたる2,000億円を売り上げる重要事業」(関係者)だが、韓国ではSNSでの競争が激化。LINEは19年1〜9月期に275億円の営業赤字に。さらにLINEペイのプロモーションや人工知能開発費など膨大なコストがかかるため、18年9月、第三者割り当て増資で1,480億円を調達したが、既に600億円以上使用。投資ファンド事業を持ち潤沢な資金力があるソフトバンクグループと組むのが得策と判断した。

 今回の統合は孫正義氏と、ネイバー創業者の李海珍氏との韓国でのトップ会談で決まったといわれるが、11月18日、経営統合で基本合意したと正式に発表した時に、株式市場に高揚感はなかった。今後の行方を静観する動きが広まっている。

★メルカリの窮状

 ヤフーとLINEの経営統合という歴史的ビッグディールに焦るのが、フリマアプリ最大手のメルカリ(山田進太郎社長兼CEO)だ。

 13年のサービス開始時は後発だったが、グロービス(堀義人代表取締役)系のファンドや三井物産(安永竜夫社長)、日本政策投資銀行(渡辺一社長)といった有力事業会社からも出資を募り、シェアを獲得。“日本のベンチャー業界の星”として、昨年6月株式上場も果たした。

 しかし、上場後は米国事業や決済事業「メルペイ」の投資がかさみ、営業赤字が恒常化。株価も公開価格の3,000円を下回る状態が続く。Zホールディングスは11月にZOZOの買収を完了させるなど矢継ぎ早に拡大戦略を取っているだけに「次の焦点はメルカリ」との声が市場関係者から挙がっている。

 メルカリの窮状は直近の人事にも現れた。9月末の株主総会で小泉文明社長が会長となり、山田会長が社長となる逆転現象が起きた。対外的には小泉氏は日本製鉄(橋本英二社長)から買収した鹿島アントラーズを運営する鹿島アントラーズ・エフ・シーの経営に専念するとあるが、事実上の社長更迭とみられる。7~9月期の取扱高が国内事業でも前四半期比マイナスとなったことに山田氏が業を煮やしたとみる関係者は多い。

 焦点は今後、櫛の歯が欠けるように有力幹部が去っていくかどうかだ。かつてはゴールデンチームとまでいわれたメルカリの経営陣だが、19年初めに米国事業のトップを一時期務めていた共同創業者の石塚亮氏が退社している。現在の米国事業トップでフェイスブックの有力幹部だったジョン・ラーゲリン氏やグリー(田中良和会長兼社長)の取締役からメルペイの責任者に転じた青柳直樹氏も、結果を残さなければ事業の撤退と同時に会社を去る公算が高い。

 メルカリを買収する候補には、ヤフー・LINE連合の台頭を意識せざるを得ない楽天(三木谷浩史会長兼社長)も上がっている。経営の力を失ったと同時に安値で買い叩かれるならば、かつての星にとってあまりに寂しい結末だ。

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★2020年1月号(12月配信)記事の目次はこちら

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