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山田太一 二流と三流の違いとは 中井貴一 100周年記念企画「100年の100人」

数々の名作ドラマを手がけた脚本家・山田太一(87)。人気シリーズとなった「ふぞろいの林檎たち」で主人公を演じた中井貴一氏が山田作品の魅力を語る。/文・中井貴一(俳優)

語り部・中井貴一

中井さん

「ふぞろい」は、時任三郎さん、柳沢慎吾さん、手塚理美さん、石原真理子さん、中島唱子さんなどが演じる若者たちの群像劇でした。台本には小説のように読める「読み本」と役者が演じて面白い「り本」があります。

山田先生の脚本は「演り本」ですから、撮影中に実際芝居をしながら「あ、こうなるんだ」と驚くことがよくありました。

一言一句変えてはならないのも、先生が各々のキャラクターを頭に浮かべ、会話のニュアンスで各々の役の色を出すように言葉を選ばれているからだと思います。笑う場面の「ハハ」と「ハハハ」では意味が違う。初めはどう演じればいいかわかりませんでした。

ドラマが放映されると予想を超える反響がありました。しかし、シリーズのパートⅢ(91年)で僕は壁にぶつかりました。なぜか納得のいく演技ができなかったのです。

悩んだすえに山田先生に電話をかけました。先生はいつもの穏やかな口調で「中井さんは俳優としていろいろ経験されました。それは悪いことではありません」と。僕は当時29歳で、大河ドラマ「武田信玄」の主演も経て、10年のキャリアになっていました。

山田太一

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