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【50-経済】アフターコロナ 銀行が直面する3つの課題|小野展克

文・小野展克(名古屋外国語大学教授)

不良債権が急拡大する懸念

メガバンクを中心とした日本の銀行は、デジタル化が迫る金融ビジネスの根本的な転換と、企業への資金供給が銀行融資に偏重しているという2つの課題に直面している。

そこにコロナショックによる不良債権の増加懸念という課題が加わった。新型コロナウイルスは人々の接触を制限し、様々なビジネスに広範な打撃を与える一方で、生身の接触を必要としないデジタル化を加速する側面も持つ。2021年は3つの課題が相互に絡み合いながら、銀行の在り方に変革を迫る年となるだろう。

全国銀行協会によると、日本の銀行の融資残高は新型コロナの影響が深刻化した2020年4月あたりから急増、8月には前年同月比で6.7%も伸びた。2019年度の前年度比2.2%増と比べると伸びは急激だ。銀行はコロナショックで売上が吹き飛んだ企業向けの融資を急拡大させ資金繰りを支えている。

そこで、どこまで企業倒産が拡大し、急増した融資も含めて不良債権問題が深刻化するのかが最初の焦点となる。メガバンクは貸倒引当金を2倍に拡大、企業倒産による融資の焦げ付きに備えている。メガバンクの自己資本比率は厚く、不良債権の拡大を吸収する一定の余力はある。さらに世界各国の財政出動と中央銀行の潤沢な資金供給で主要市場の株価は安定的に推移している。

ただ、グローバルに進む消費の減退という回路を通じて、大手メーカーなどの収益が打撃を受ける可能性は大きい。需要の減退が、実体経済を冷え込ませれば、企業倒産が続発、想定を超えた規模で不良債権が急拡大する懸念は拭えない。

日本が1990年代に経験したバブル崩壊後の不良債権問題は、地価や株価の上昇を当て込んで過剰な融資を実行した銀行が主導した。そして2008年に勃発した米国発のリーマンショックも、サブプライムローンを証券化して販売した金融機関が生み出した。両者の経済危機には、金融の暴走という共通点があった。しかし、今回のコロナショックは、グローバルな需要の減退が発信源だ。新たな経路で、世界経済はより深刻な危機局面を迎える懸念がある。その際には、政府は公的資金を活用して金融システムを守ることも選択肢に入れる必要があるだろう。

「いいね!」も信用力を左右

そして2つ目は金融のデジタル化だ。スマートフォンでの支払いが広がる中、IT企業の金融業界への参入が続く。デジタルデータの蓄積は、企業や個人の信用力をチェックする物差しを変えつつある。どんな人からフェイスブックで「いいね!」を獲得しているのかすらも個人の信用力を左右する。駅前の店舗で預金を集め、不動産担保で融資する既存の銀行のビジネスは、すっかり古びてしまった。

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