見出し画像

高市早苗「総裁選に出馬します!」

力強く安定した内閣を作るには、自民党員と国民からの信任が必要だ。私の「日本経済強靭化計画」!/文・高市早苗(衆議院議員)

衆議院議員 高市早苗写真

高市氏

国会議員の矜持

各種世論調査で、菅内閣の支持率が下落し続けている。

テレビで拝見する菅義偉総理の顔からは、「叩き上げの庶民派総理」として人気を集めた就任当初の溌剌とした表情が消え、発する言葉からは自信も力強さも伝わらなくなってしまっており、残念でたまらない。

しかし私は、仮に菅内閣の支持率が1%になったとしても、その任期中は支え続けることを自らに誓っている。なぜならば、代議制民主主義の下、国民の皆様の代わりに、国会議員にとって最も重い「首班指名」の1票を、本会議場で菅義偉氏に投じたからだ。与党の国会議員全員が総理を選出した責任を担っており、総理の活動を応援することが国会議員としての矜持である。

私が1票を投じたのは、「安倍晋三内閣の政策を踏襲する」旨を明言した唯一の候補者だったからだ。

ところが、アベノミクスの2本目の矢である「機動的な財政出動」は適切に実行されなかった。安倍内閣では、批判を恐れずに国債を発行して「定額給付金」など巨額の財政出動を断行したが、現在は小出しで複雑な支援策に終始している感がある。

7月後半に順次開催された自民党地域支部会議では、「事業者に十分な支援をして、五輪開催の直前まで緊急事態宣言を続けていれば、もっと安心して楽しめる環境を作れたはずだ」「無観客開催を早く決断していれば、観客用の熱中症対策や医療スタッフの手配、案内ボランティアの方々への講習も行う必要はなかった」など、内閣の決断の遅れや説明不足への批判の声が相次いだ。

菅総理が力強い発信をできなくなっているのはなぜか。それは、自民党員や国民の皆様の十分な信任を受ける機会がなかったからだと思う。

昨秋の総裁選は、安倍前総裁の急病による退任を受けたものであるため、自民党『党則』に定める「特に緊急を要するとき」に実施する方法で行われた。つまり、全国の党員が投票し、国会議員票と総党員算定票が同数となる本来の方法ではなく、両院議員総会で国会議員と47都道府県支部の代表者各3名の投票によって行われた。未だ菅総理には、全党員の審判を受けて選出された経験がないのである。さらに、政権選択選挙と言われる衆院選で勝って国民の皆様の信任を頂いた経験もない。

力強く安定した内閣を作るためには、9月末の総裁任期満了時には、本来の方法による総裁選を実施し、まずは総裁選に参加したすべての自民党員の皆様から後押しを頂ける態勢を作ることが肝要だ。その後の衆院選において、全国各地で自民党候補者の運動を助けて下さる党員の皆様が、自ら選んだ総裁への信頼感と納得感を持てるようになれば、おのずと選挙戦は盛り上がる。その結果、衆院選で勝利することができれば、国民の皆様の信任も得たと言える強い内閣が誕生する。閣僚の辞任が相次ぐなど困難が続く中でも安倍政権が長期政権となったのは、国政選挙で勝ち続けたからだ。

社会不安が大きく課題が多い今だからこそ、今回、私自身も総裁選に出馬することを決断した。日本を守り未来を拓くための政策を多くの候補者と競い、ベストな道を提示する機会を得たいと切望している。

画像2

菅首相

危機管理投資と成長投資を優先

私は、国の究極の使命は、「国民の皆様の生命と財産を守り抜くこと」「領土・領海・領空・資源を守り抜くこと」「国家の主権と名誉を守り抜くこと」だと考えている。

そして、「日本全国どこに住んでいても、安全に暮らすことができ、必要な福祉や医療、質の高い教育を受けることができ、働く場所がある」——そんな地方を増やしていくことが、「リスクの分散」と「日本の持続的成長」に繋がると確信している。

国がその使命を果たす上で必要なことは、トップが先見性をもって「リスクの最小化」と「全世代の安心感創出」に必要な法制度整備を断行することである。また、それとともに大胆な「危機管理投資」と「成長投資」を行うことである。

「危機管理投資」とは、自然災害やサイバー犯罪、安全保障上の脅威など様々なリスクについて、「リスクの最小化」に資する研究開発の強化、人材育成などを行うことだ。安全と安心を担保できる製品・サービスの開発や、社会実装などに資する財政出動や税制措置も含まれる。

「成長投資」とは、日本に強みのある技術分野をさらに強化し、新分野も含めて、研究成果の有効活用と国際競争力の強化に向けた戦略的支援を行うことだ。産業用ロボット、マテリアル(工業素材)、膜技術、量子技術(基礎理論・基盤技術)、電磁波技術などにおいて、日本は技術的優位性を持つ。

電磁波技術を例に挙げると、神戸大学の木村建次郎教授の手による「マイクロ波マンモグラフィー」は、販売まで数年かかるそうだが、「痛くない乳がん検診」が実現したなら、どれほど多くの女性が幸せになることだろう。乳房を押しつぶされて痛みが酷い現在のマンモグラフィーへの恐怖から乳がん検診を先送りしてしまう私のような女性が多いと思うが、検診の受診率が上がることによって早期発見に繋がり、医療費の節約にもなる。これは、世界中に輸出できる医療機器になるだろう。

また、「危機管理投資」によって世界共通の課題を解決できる製品・サービス・インフラを生み出せた場合には、国際展開を行うことによって「成長投資」にもなる。

自然災害でもサイバー攻撃でも、事前の備えにかかるコストより、復旧にかかるコストと時間の方が膨大である。「危機管理投資」の恩恵は、これから生まれる未来の納税者にも及ぶものだ。「成長投資」は、雇用を生み、個人や企業の所得を増やし、消費マインドを改善させ、結果的には税収増を目指すものだ。

「改革」から「投資」への転換

この私のプランを『サナエノミクス』と称すると少し間抜けな響きで残念だが、基本路線は『ニュー・アベノミクス』である。「大胆な金融緩和」「機動的な財政出動」「危機管理投資・成長投資」を総動員してインフレ率2%を目指すものだ。アベノミクスの第3の矢は「民間活力を引き出す成長戦略」で規制緩和など「改革」が主だったが、私はここを「投資」に変える。第2の矢の「機動的な財政出動」は、あくまでも緊急時の迅速な大型財政措置に限定するので、第3の矢の「危機管理投資・成長投資」とは別物だ。

そして、インフレ率2%を達成するまでは、時限的にプライマリーバランス(PB)規律を凍結して、戦略的な投資にかかわる財政出動を優先する。頻発する自然災害や感染症、高齢化に伴う社会保障費の増大など困難な課題を多く抱える現状にあって、政策が軌道に乗るまでは、追加的な国債発行は避けられない。

こう述べると「日本国が破産する」と批判される方がいる。しかし、「日本は、自国通貨建て国債を発行できる(デフォルトの心配がない)幸せな国であること」「名目金利を上回る名目成長率を達成すれば、財政は改善すること」「企業は借金で投資を拡大して成長しているが、国も、成長に繋がる投資や、将来の納税者にも恩恵が及ぶ危機管理投資に必要な国債発行は躊躇するべきではないこと」を、強調しておきたい。

「強い経済」は、結果的に財政再建に資するものであり、全世代の安心感を創出するための社会保障を充実させる上でも不可欠だ。外交力や国防力、科学技術力や文化力の強化にも直結する。

以降、「危機管理投資」と「成長投資」について、暮らしに身近な課題をいくつか紹介してみたい。

画像3

必需品は国内生産・調達が基本

昨年来、日本では、マスク、消毒液、医療用ガウン、人工呼吸器、注射器、半導体などの不足を経験した。

ここから先は

4,438字 / 2画像
noteで展開する「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。同じ記事は、新サービス「文藝春秋 電子版」でお読みいただけます。新規登録なら「月あたり450円」から。詳しくはこちら→ https://bunshun.jp/bungeishunju

文藝春秋digital

¥900 / 月

月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に配信。月額900円。(「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了します。今後は、新規登録なら「…

「文藝春秋digital」は2023年5月末に終了しました。今後は「文藝春秋 電子版」https://bunshun.jp/bungeishunju をご利用ください