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霞が関コンフィデンシャル<官界インサイドレポート>

日本を動かすエリートたちの街、東京・霞が関。日々、官公庁を取材する記者たちが官僚の人事情報をどこよりも早くお届けする。

★異例人事に前首相の影

昨年12月25日に発令された異例の人事が外務省内で波乱を呼んでいる。杉山晋輔駐米大使(昭和52年、外務省入省)が退任し、冨田浩司駐韓大使(56年)が就任するというものだ。

12月8日の各社報道も不可解極まりなかった。まだ閣議決定もされておらず、冨田次期大使のアグレマン(承認)も米国側に提出されていない段階での一報だった。

「バイデンシフト」と各紙は解説する。冨田氏は平成26年、北米局長としてオバマ前大統領来日に携わるなど、民主党政権に人脈を築いていると書く。実にもっともらしい解説だが、霞が関では別の説が流れ始めている。いまや菅義偉首相が煙たがる安倍晋三前首相と杉山氏の近すぎる距離が問題視されたという。

11月26日午後、官邸で行われた菅首相と茂木敏充外相の会談で、首相が駐米大使交代を指示。本省に戻った茂木氏から秋葉剛男外務次官(57年)に首相の意向が伝えられ、そこから秘密裏に後任者選びが始まった。

冨田氏の他、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部の山崎和之大使(58年)など数名がリストアップされたが、最後は茂木氏が冨田氏に白羽の矢を立てた。

小泉純一郎政権で茂木氏が外務副大臣だった時に、冨田氏は総合外交政策局安全保障政策課の課長。当時から茂木氏は高く評価していた。

退任する杉山氏は、トランプ政権のミック・マルバニー大統領首席補佐官とは極めて親しく、歴代の駐米大使で大統領首席補佐官に最も深く食い込んだ駐米大使との評価を得ていた。さらに菅首相が4回会ったと誇らしげに語るアントニー・ブリンケン次期国務長官にも、杉山氏はオバマ政権の副大統領補佐官時代から深く刺さっている。

菅首相は、杉山氏のワシントン人脈より安倍氏の影響力排除を優先した形となった。

バイデン 2021論点 

バイデン大統領

★軽量級配置が裏目に

支持率が急落する菅内閣。官邸内の構図もはっきりしてきた。首相の方針は前政権での今井尚哉内閣官房参与(57年、旧通産省)のような「矩(のり)を超えた」権力者をつくらないというもの。和泉洋人首相補佐官(51年、旧建設省)の裁量も限定的だ。

官房長官時代の秘書官をそのまま持ち上げた理由は官僚の年次が低い方が、首相自身の意向を通しやすいから。だが裏目に出ている面もある。

信任が圧倒的に厚いのは高羽陽秘書官(平成7年、外務省)だ。官房長官秘書官をそのままスライドさせたもう一つの理由が、高羽氏が動きやすいように他府省秘書官の年次を上げないためだった。

経産省出身の門松貴秘書官(6年、旧通産省)は“精神安定剤”と散歩の係で、政策面への関与は薄い。口さがない人は「前政権では今井氏、長谷川榮一前首相補佐官(昭和51年、旧通産省)、佐伯耕三前秘書官(平成10年、同)と3人も経産省がいたのに、いまはゼロ」と揶揄する。

内政で要となる大沢元一秘書官(7年、旧大蔵省)は年次の低さで苦戦する。「古巣に戻ることを考えて、財務省に気を使い過ぎ」とされるうえ、生来の傲岸ぶりに政治家や秘書連中の評も芳しくない。長丁場の通常国会が、菅官邸の正念場となる。

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菅首相

★「桜」問題の影響が……

山﨑重孝内閣府次官(昭和58年、旧自治省)の退任が確定的となった。内閣府が事務局を担う「桜を見る会」問題では絶妙なタイミングで関係書類が処分され、山﨑氏の“手堅さ”が高く評価された。安倍前首相と同じ山口出身で、一時は「総務省に次官として返り咲く」との見方も。だが安倍氏は退陣。内閣総務官時代から取り組んだ皇位継承行事が一区切りついたため、早ければ通常国会前にも内閣府を離れる。

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