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数字の科学「舎密開宗」のページ数=1100ページ 佐藤健太郎

サイエンスライターの佐藤健太郎氏が世の中に存在する様々な「数字」のヒミツを分析します。

「舎密開宗」のページ数=1100ページ

明治期の日本の科学について調べていると、不思議になることが多い。何しろ、明治維新からわずか30年程度で、北里柴三郎、高峰譲吉、野口英世といった、ノーベル賞級の科学者が続々と現れているのだ。長く鎖国していた島国から、一挙に多くのトップ研究者が出現したのは、科学史上の奇観といってよいだろう。

もちろんこれは偶然のことではない。すでに江戸後期から蘭学・洋学という形で、西洋の先進的な科学を取り入れる動きは起こっていた。中でも杉田玄白、前野良沢、緒方洪庵などの名は、現代でもよく知られている。

だが、その功績の割に知られていない人物もいる。宇田川榕菴はその1人だ。1798年江戸に生まれ、津山藩の藩医であった宇田川玄真の養子となってその薫陶を受けた。榕菴は我が国の植物学の開祖となり、その分類や医薬としての応用について多くの研究を行っている。だが彼がより大きな功績を挙げたのは、化学の分野だ。1837年から10年ほどの歳月をかけて出版された「舎密開宗せいみかいそう」はその集大成というべきもので、1100ページにも及ぶ大著だ。

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