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丸の内コンフィデンシャル<財界インサイドレポート>

日本の経済の中心地、東京・丸の内。敏腕経済記者たちが“マル秘”財界情報を覆面で執筆する。

★絶好調ニトリ、次の一手

家具・日用品大手のニトリホールディングス(似鳥昭雄会長)が首都圏戦争に参戦する。ホームセンター(HC)大手の島忠(岡野恭明社長)の買収に名乗りをあげ、再編劇は新局面に入った。

島忠をめぐっては、HC最大手のDCMホールディングス(石黒靖規社長兼COO)が完全子会社化に向けて11月16日までTOB(株式公開買い付け)を実施中。島忠はDCMのTOBに賛同している。ニトリも積極的で、DCMとの一騎打ちが始まった。

DCMによる島忠のTOBは1株4200円で買収総額は最大1636億円。ニトリは島忠の全株式の取得を目指すべく、DCMを1株あたり1300円上回る買い取り価格を提示した。

ニトリは国内で約560店舗、海外で約70店舗を展開。手頃な価格と消費者のニーズに合わせた商品が新型コロナ禍で在宅需要をつかみ、2020年3月~8月期決算で営業最高益を更新した。積極出店で好調を維持するニトリだが、大都市圏の出店余地は狭まってきた。島忠を取り込めば都心の店舗網を増やせる。「島忠は割安の掘り出しもの」(ニトリ首脳)とみており、手に入れられればDCMの首都圏進出を阻止できる。

埼玉や東京などを中心に60店舗を持つ島忠は、桐タンスの産地、春日部市発祥の家具店で、かつては家具売り上げ日本一を誇ったことがある。その後、HCに進出した。

DCMが島忠を獲りに行ったのも首都圏制覇が目的だ。DCMはホーマック(札幌市)、カーマ(愛知県刈谷市)、ダイキ(愛媛県松山市)が06年に統合。その後、サンワ(青森市)、くろがねや(山梨県甲府市)が加わったが、いずれもローカルのHCで、首都圏では馴染みがない。今後、HC業界は、企業規模の闘いになるのが必至で、首都圏を制したものが真の勝者となる。

DCMの石黒社長はDCMの母体となったホーマックの創業者の長男だ。北海道発祥のニトリとDCMが、首都圏を舞台に島忠の争奪戦を繰り広げる。

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似鳥会長

★助っ人幹部の「通信簿」

パナソニック(津賀一宏社長)が不振から抜け出せないでいる。20年3月期の連結純利益は前期比約21%減の2257億円。今期はさらに減って1000億円にとどまる見通しだ。

社運をかけた米テスラ向け車載電池事業は収益に寄与せず、前期も赤字。ここにきて生産が安定したところで、同社のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は車載電池の内製化に取り組むとぶち上げた。これを受け「パナソニックのテスラ向け車載電池事業の中長期的な成長期待は一段と低下する印象」というアナリストリポートも出た。

「収益の柱が定まらず、どこに向かって走っているのかが分からない」(幹部)。そんななかで「会社を変えることが自分の使命」と公言する津賀社長が期待を寄せるのは、海外の大手企業などで経験を積み、パナソニック入りした外部人材だが、これまた期待を外している。

松下電器産業(当時)に入社した後、日本マイクロソフト社長などを歴任し、3年前に出戻った樋口泰行代表取締役専務執行役員は企業向けシステムの社内カンパニートップだが、「外からどう見られるかばかりを気にしていて、改革の意欲が見られない」(OB)。

アナリスト出身で、現在は経営企画の中心に座る片山栄一チーフ・ストラテジー・オフィサー(CSO)の評判も思わしくない。「自分らしさを出そうとするあまり空回り気味」(同)。おかげで経営方針の策定は遅れっぱなしだ。独SAP日本法人から招き入れた馬場渉氏は実績が出せず、「事実上ラインから外された」(幹部)という。

パナソニックは来年にも社長交代があるという見方が強い。津賀社長は「彼らに代わる人材が社内にはいない」と公言、外部から招き入れた人材を持ち上げる。しかし津賀氏の後継者として名前が挙がるのは、本間哲朗代表取締役専務執行役員、楠見雄規常務執行役員、品田正弘常務執行役員の3人。「結局は内部昇格だろう。人心も一新できず、ますます道に迷っている」と幹部は嘆いている。

★未来都市と後継者

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