5_安倍と習近平

「ポスト習近平は習近平」毛沢東化する中国最高権力者

文・近藤大介(ジャーナリスト)

「偉大なる中華人民共和国万歳! 偉大なる中国共産党万歳! 偉大なる中国人民万歳!」

 2019年10月1日、建国70周年記念式典が挙行され、北京の天安門広場に習近平国家主席の野太い声が響き渡った。新中国の建国を宣言した70年前の毛沢東主席と同様、天安門の楼台に上がった習主席は、すっかり老いぼれた93歳の江沢民元主席と76歳の胡錦濤前主席を左右に従え、「中華民族の偉大なる復興という中国の夢を実現するため奮闘努力していく」と宣言したのだった。

「ポスト習近平は習近平」――2019年8月に北京を訪れた時、権力闘争に敏感な「北京っ子」たちに、何度こう言われたことか。私が「ポスト習近平は誰なんだい?」と水を向けた際にだ。

 中国政治は、中国共産党全国代表大会が開かれる5年周期で回っている。秋の党大会で共産党総書記に就いた「最高指導者」が、翌年3月に開かれる全国人民代表大会で国家主席に選出される。これまでは、「国家主席は2期を超えて連続して就任できない」(憲法79条)ため、共産党総書記のポストも「2期10年」という不文律があった。

 ところが、2012年11月の第18回共産党大会で総書記に就き、翌年3月に国家主席に就任した習近平が目指したのは、崇拝してやまない「建国の父」毛沢東元主席のようになることだった。すなわち「終身政権」である。

「少なくとも2035年までは政権を続ける」――習近平総書記は2012年秋の時点から、密かにそう決意していたものと思われる。2035年は、権力の頂点に立ったまま毛沢東主席が死去した82歳に、習近平がなる年である。習政権はやがて、2035年を目標にした数々の国家目標を打ち出し始めた。

 この野望を達成するため、習近平総書記は最初の5年、「トラ(大幹部)もハエ(小役人)も同時に叩く」という汚職撲滅キャンペーンを展開し、江沢民元総書記に近い「江沢民派」(上海閥)の撲滅に尽力した。同時に、もう1つの大勢力である「胡錦濤派」(団派)の権力削ぎ落しにも腐心。5年間で実に153万7,000人もの「汚職分子」を摘発したと誇ったのだった。

 本来なら、「2期10年」の折り返し地点にあたる2017年10月の第19回共産党大会で、「後継者」の指名がなされるはずだった。その時点で候補者は3人いた。江沢民派が育てた孫政才重慶市党委書記、胡錦濤派のホープである胡春華広東省党委書記、それに習近平総書記子飼いの陳敏爾貴州省党委書記である。

 だが習近平総書記は、あろうことか党大会3ヵ月前の同年7月、孫政才書記を「汚職分子」としてひっ捕らえてしまった。恐れをなした胡春華書記は、「自分は未熟者なので(共産党トップ7入りせず)地方勤務を続けたい」と習総書記に手紙を書いた。それで胡春華は、地方(農村)問題担当副首相となり、何とか粛清を免れた。陳敏爾は孫政才の後の重慶市党委書記に就いた。

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