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佐藤優のベストセラーで読む日本の近現代史 『人新世の「資本論」』斎藤幸平

新たな左派の理論的リーダーの誕生

わが国でも環境問題に対する関心が高まっている。コンビニやスーパーでのレジ袋が有料化され、エコバッグを持つ人が増えている。菅義偉首相は2050年の脱炭素化を宣言し、2020年12月25日に政府も「グリーン成長戦略」を発表した。

〈政府は25日、2050年の脱炭素化に向けた「グリーン成長戦略」を正式に発表した。家庭、運輸、産業の各部門のエネルギー利用をできるだけ電気でまかない、使用量が増える電力部門では再生可能エネルギーの導入を加速させる。(略)経済効果は30年に年90兆円、50年に年190兆円と試算する。(略)脱炭素を「経済成長の制約・コストとする時代は終わり、国際的にも成長の機会ととらえる時代になっている」(加藤官房長官)とし、洋上風力や水素、自動車、航空機、原子力など14の重点分野で取り組みの方向性や数値目標を掲げた。規制や税制などの政策を総動員する一方、民間投資を促し、二酸化炭素(CO2)の排出量を、50年に森林吸収分などを差し引いた実質でゼロにする〉(「朝日新聞」2020年12月26日朝刊)

SDGsは「大衆のアヘン」

こうした国民や政府の環境対策がまやかしであると厳しく批判しているのが斎藤幸平氏(大阪市立大学准教授)だ。斎藤氏の批判は具体的だ。

〈温暖化対策として、あなたは、なにかしているだろうか。レジ袋削減のために、エコバッグを買った? ペットボトル入り飲料を買わないようにマイボトルを持ち歩いている? 車をハイブリッドカーにした?/はっきり言おう。その善意だけなら無意味に終わる。それどころか、その善意は有害でさえある。/なぜだろうか。温暖化対策をしていると思い込むことで、真に必要とされているもっと大胆なアクションを起こさなくなってしまうからだ。良心の呵責(かしゃく)から逃れ、現実の危機から目を背けることを許す「免罪符」として機能する消費行動は、資本の側が環境配慮を装って私たちを欺くグリーン・ウォッシュにいとも簡単に取り込まれてしまう〉

 国連、日本の政府や企業が進めようとしているSDGs(持続可能な開発目標)についても斎藤氏は「大衆のアヘン」であると認識している。

〈では、国連が掲げ、各国政府も大企業も推進する「SDGs(持続可能な開発目標)」なら地球全体の環境を変えていくことができるだろうか。いや、それもやはりうまくいかない。政府や企業がSDGsの行動指針をいくつかなぞったところで、気候変動は止められないのだ。SDGsはアリバイ作りのようなものであり、目下の危機から目を背けさせる効果しかない。/かつて、マルクスは、資本主義の辛(つら)い現実が引き起こす苦悩を和らげる「宗教」を「大衆のアヘン」だと批判した。SDGsはまさに現代版「大衆のアヘン」である〉

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