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突然の辞意表明で総裁選へ “ポスト安倍候補”5人は何を語っていたか

“ポスト安倍候補”5人の「ことば」

コロナ禍のさなか、突然の幕引きだった。

安倍晋三首相は、28日午後5時に開いた記者会見で、体調問題を理由に辞任する意向を明らかにした。24日には、首相としての連続在任期間が歴代最長となったばかりだった。

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、永田町では、激務で安倍首相の持病の潰瘍性大腸炎が再発したのではないかと囁かれてきたが、その推察は的中していた。

安倍首相は会見で、自身の体調問題について「8月上旬に潰瘍性大腸炎の再発が確認された」と語ったうえで、辞任を決断した理由をこう説明した。

「病気と治療を抱え、体力が万全ではないという苦痛の中、大切な政治判断を誤ること、結果を出さないことがあってはならない」

こうなった以上、最大の関心事は、“ポスト安倍”だ。会見でも後任者に関して多くの関連する質問が飛んだが、安倍首相はその場での明確な言及は避けた。

急転直下始まったポスト安倍レース。その行方に注目が集まっている。

『文藝春秋』は、昨年来、“ポスト安倍”候補にインタビューを行なってきた。その中から、「本命」とされる5人の発言を振り返ってみよう。

石破「逃げるようなことはしちゃいけない」

まずは、常にポスト安倍候補ナンバー1とされてきた石破茂元幹事長だ。

石破氏は、2019年11月号の「石破茂『論理の破綻した憲法改正は許せない』」で、こう語っていた。

「役職から外れても、まだ私にご支持があることはとても有難いし、大事にしなきゃいけないと思います。国民の期待がある以上、何かの状況が来て、私がやらなきゃいかんということになったら、逃げるようなことはしちゃいけないと思っています。だけど、それは平時ではないかもしれない」

この記事の取材時はまだコロナ禍ではなかった。その後、世界的なパンデミックにより「平時」から「有事」になったのは説明するまでもない。石破氏が「私がやらなきゃいかん」と決断する条件は揃っている。

岸田「禅譲路線は間違っている」

かねてから安倍首相の“意中の人物”とされてきたのが、岸田文雄政調会長である。岸田氏自身も意欲を見せており、2019年11月号のインタビュー「岸田文雄『安倍総理からの「禅譲」はありえない』」でも、「次の総裁選には立たれますね?」との質問に対し、「はい。立ちます」と断言した上で、

「まだまだ力不足ですし、未熟な面もあると思いますが、次の時代を担えるように力を付けたい。そして、安倍総理の時代が終わった後、総裁選挙にぜひ挑戦したいと思っています」

と語った。さらに、

「総理から私への禅譲という言葉がよく言われますが、制度としてありえません。総裁を目指すなら、総裁選を乗り越えなければならない。戦わなければならない。だから禅譲路線というのは間違っています」

と強気の姿勢も見せている。その言葉通り、波乱の総裁選が岸田氏を待ちわびている。

河野「初当選から総理を目指してきた」

ここにきて、最有力候補として急上昇しているのが、河野太郎防衛大臣だ。TwitterなどのSNSも自在に駆使し、国民の人気も高い河野氏は、2020年9月号の「河野太郎『中国の暴挙を放置するな』」の中で、明確にこう述べている。

「私は初当選の頃から総理を目指してきました。この国はどうあるべきか、どのような立場でも常々考えてきたつもりです。そして、これからも国民のために考えていきたいと思います」

河野氏は安倍首相が辞意を表明した直後、記者団から総裁選出馬の意向を問われたが、終始無言を貫いた。その胸中にはどのような思いが去来していたのだろうか。

麻生「みっともないのがいるじゃない」

2012年12月の第二次安倍政権発足時から副総理兼財務大臣として安倍首相を支えてきたのが、麻生太郎氏だ。

総理経験者である麻生氏も、ポスト安倍の1人としていまだに名前が挙がる存在である。安倍首相が辞任の意向を固めたという一報が出た直後、Twitterのトレンドには麻生氏の名前も浮上した。麻生氏は2020年1月号のインタビュー「安倍総理よ、改憲へ四選の覚悟を」の中で、

「私自身はもう1回総理大臣を、というつもりはありません。(略)もう1回やるには、若さが足りないし、体力がもう少し必要です」

と語っているが、ポスト安倍の条件についてはこのように語っていた。

「ポスト安倍の条件は、大前提として、『党を出たり入ったりしていない』こと。自民党も良い時ばかりではないのだから、そういう時は耐えなくちゃならないのに、みっともないのがいるじゃない。すぐ良い方へ行きたがる人。この人たちは全く筋が通っていないと思います。私の眼中にはありませんな」

菅「リップサービスですよ(笑)」

そんな麻生氏が当時、「今、安倍さんの代わりになろうとするオーラは特に感じませんけどね」と語っていたのが、菅義偉官房長官だ。

政権ナンバー2として不動の地位を築いた菅氏だが、本人は一貫して「自分が(ポスト安倍に)なることはない」と否定していた。だが、ここにきて安倍首相がポスト安倍候補として菅氏をあげるなど、大本命として注目を集める存在になりつつある。

二階俊博幹事長も、安倍首相が辞意を表明した28日、TBSの報道番組の収録で、菅氏について「立派なものだ。十分その任(総理大臣)に耐えうる人材だ」と大絶賛。

菅氏本人は、2020年9月号のインタビューで、

「総理が『ポスト安倍』の候補として私の名前を挙げたようですが、リップサービスですよ(笑)。安倍政権を作った1人として、責任を果たしていきたいと思っています」

とやんわり否定したものの、周囲で「菅待望論」が高まっているのは間違いないだろう。

***

今後、自民党総裁選が行われ、安倍首相の次の総裁が選出される。自民党は28日に緊急役員会を開き、総裁選の時期や形式については二階幹事長に一任すると決定。果たして、次期総理の座には誰が就くのかーー。その結果から目が離せない。

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