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【76-生活】「海のマツタケ」サンマが食べられなくなる秋|山田吉彦

文・山田吉彦(東海大学海洋学部教授)

サンマの平均卸値が1キロ8000円

サンマは高級魚の仲間入りを果たしたようだ。

2020年7月15日、釧路で行われた初競りでは、1キロ4万1040円もの値を付け、1匹5980円の値段で店頭に並び話題となった。

本格的な漁期に入った8月25日、豊洲市場での競りでは、1匹あたり1500円を超える値がついた。この日の平均卸値は1キロ8000円ほどであり、クロマグロの2倍近い高値だ。

本来ならサンマが旬を迎える9月下旬、スーパーの鮮魚売り場に置かれたサンマに278円の値札がついていた。消費税を払うと300円になる。例年なら100円ほどであり、3倍の値段だ。活〆ブリの切り身が238円、真鯛の切り身が249円。大衆魚の代表格であったサンマは、高級魚に仲間入りした。

2019年、サンマの水揚げ量は、統計を取り始めてから最低の4万517トンに留まった。4万トン程度の水揚げだと、1年間に食べることができるサンマの量は、ひとり1匹から2匹である。サンマは庶民的な魚ではなくなってしまったのだ。不漁の原因は、沿岸部の海水温が上昇したため、サンマが日本の近海を回遊しなくなったからだ。サンマを獲るためには、沿岸から200海里(約370㎞)以上離れた海域まで出漁しなければならなくなった。燃料代を考えると採算がとれるものではない。しかも遠い海域まで出漁できるのは、製氷機能か冷蔵設備を持つ大型船のみである。通常であれば漁獲高が最も多い北海道東部の小型漁船の漁師たちは、早々にサンマ漁をあきらめ、沿岸でのイワシ漁にシフトしてしまったのだ。

サンマが回遊する水温は、摂氏10度から15度が適温である。2020年9月下旬の、北海道東部沖の海水温は18度、三陸沖では21度と平年より2度から3度高い状態が続いていた。これでは、サンマの群れは寄ってこない。

サンマを獲るのは、日本人に限ったものではない。北太平洋の公海上では、台湾、中国、韓国の漁船が、サンマを大量に獲っている。2018年の水揚げ量は、台湾が約18万トンと最も多く、日本の約12万トンの1.5倍にもなっている。すでにサンマの乱獲が始まっているのだ。日本のサンマ漁船は、大きくても300トン程度であるが、台湾、中国のサンマ漁船は、1000トンほどの大きさがあり、船内で冷凍し箱詰めまでする機能を持っている。漁の期間中獲り続け、製品だけを運搬船で本国へ運ぶシステムである。しかも、日本人は、大型で脂がのっているサンマを好むため、小型のサンマは漁獲対象とはならないが、台湾、中国の漁船の網の目は小さく、小型のサンマまですべて獲り尽してしまうのだ。

サンマ資源の枯渇

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