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佐藤優のベストセラーで読む日本の近現代史 『政治家の覚悟』菅義偉

コロナ禍があぶり出す各国の政治文化

1月16日に毎日新聞と社会調査研究センターが行った全国世論調査によると、菅義偉内閣の支持率は33%に下落した。2020年12月12日に行った前回調査では40%だったので、7ポイント下落した。不支持率は57%(前回49%)だった。他社の世論調査でも菅内閣の支持率は40%前後に急落している。

〈毎日新聞の16日の世論調査で内閣支持率が33%まで落ち込んだことを受け、政府・与党は「30%を切ったら危険水域だ」(自民党幹部)と危機感を募らせている。政府の新型コロナウイルス対策への不満が原因との見方が大半で、18日召集の通常国会で野党の攻勢が強まりそうだ。自民党内からは「『菅降ろし』が始まるのではないか」(党中堅)との声も出ている。/政府関係者は調査結果に「これは厳しい。なんともコメントしようがない」と語った。10月までに行われる次期衆院選への影響を警戒する声もあり、自民党ベテランは「20%台になれば、選挙に弱い若手たちは慌て出すだろう」と漏らす。/政権発足時に64%あった支持率は低下を続けている。自民党幹部は「落ちた原因は全てコロナだ。イライラが募って国民の不満が充満している」と分析した。閣僚経験者は、首相が記者会見などで原稿を棒読みしたり、言い間違えたりする場面が目立つことに触れ「首相のリーダーシップに国民が疑問を持っているのではないか」と指摘した。/これに対し、官邸関係者は「コロナ対策で手を打っている。効果が出始めれば雰囲気は変わる」と強調するが、支持率が好転する見通しは立っていない。/野党は勢いづいている。共産党の小池晃書記局長は取材に「後手後手、小出し、右往左往。政権への信頼が崩れつつある」と指摘。立憲民主党の福山哲郎幹事長は「場当たり的な対応や度重なる方針変更で、もはや人心が離れている」と批判した。【野間口陽、遠藤修平、宮原健太】〉(「毎日新聞」1月17日朝刊)

評者は菅政権が近未来に危機的状況に陥り、政局になるとは見ていない。評者は日本の外交官として1987年8月から95年3月までの7年8カ月、モスクワの日本大使館で働いていた。その間に1991年8月のクーデター未遂事件、同年12月のソ連崩壊、93年10月のモスクワ騒擾事件(エリツィン大統領派と旧議会派の武力衝突)があった。これらの歴史的事件を通じ、ロシアの政治文化を頭だけでなく、皮膚感覚で理解できるようになった。コロナ禍で各国の政治文化の特徴がはっきりした。自分で自分の姿が見えないように、日本人には国家指導者に対する国民の無意識のレベルでの認識がよく見えていない。だから日本人とロシア人の国家指導者に対する意識の違いを比較してみると、事柄の本質が見えてくる。

政治に期待しないロシア人

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