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藤崎彩織 ねじねじ録|#6 アーリーバードマン

デビュー小説『ふたご』が直木賞候補となり、その文筆活動にも注目が集まる「SEKAI NO OWARI」Saoriこと藤崎彩織さん。日常の様々な出来事やバンドメンバーとの交流、そして今の社会に対して思うことなどを綴ります。

Photo by Takuya Nagamine
■藤崎彩織
1986年大阪府生まれ。2010年、突如音楽シーンに現れ、圧倒的なポップセンスとキャッチーな存在感で「セカオワ現象」と呼ばれるほどの認知を得た4人組バンド「SEKAI NO OWARI」ではSaoriとしてピアノ演奏を担当。研ぎ澄まされた感性を最大限に生かした演奏はデビュー以来絶大な支持を得ている。初小説『ふたご』が直木賞の候補になるなど、その文筆活動にも注目が集まっている。他の著書に『読書間奏文』がある。

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アーリーバードマン

 2020年の12月にSEKAI NO OWARIがリリースした「silent」という楽曲は、雪の世界の中で『貴方』を思うクリスマスソングだ。
 主人公は真っ白な雪を見て、こんなに静かだと閉じ込めていた気持ちが聴こえてしまうのではないか、と想像する。溶けてしまった雪の結晶を見ても、自分の触れることの出来ない世界にいる貴方を連想してしまう。そんな片思いのクリスマスを描いた作品になっている。
 作っていたのは夏の暑い時期。丁度コロナウィルスの第二波が到来し、子供の頃から通っていた野外プールは水が抜かれ、じりじりと底が焼かれているのを見ていた頃だった。
 タイアップであるドラマ側からは、冬のラブソングを作って欲しい、と言われた。しかも、斜めからや穿った角度からではなく、真っ直ぐ正統派で勝負して欲しい、という注釈付きだった。
 ただでさえ暑い時期に冬の歌を書くのは難しいのに、正統派というのはアーティストにとって何よりも難しい要望だと思う。一歩間違えれば、誰でも書けそうな言葉の寄せ集めになってしまうからだ。
 そんな難題を受けて深瀬君が提案したのは、コンペ形式で作ってみようか?という事だった。

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