日本語探偵

飯間浩明の日本語探偵【は】「反社会的勢力」の共通認識を作ればいい

国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです。

【は】「反社会的勢力」の共通認識を作ればいい

「反社会的勢力」および略語の「反社」は、2019年に一気に広まったことばです。芸能人が事務所を通さない「闇営業」で反社の会合に参加していたことが盛んに報道されました。さらに、政府主催の「桜を見る会」に反社の関係者が参加した疑惑も指摘されました。

 この「反社会的勢力」とは何か。2007年の政府指針には〈暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人〉とあります。暴力団とか、半グレとか、特殊詐欺集団とか、そういう勢力ですね。今後、国語辞典で説明するなら、この指針の記述を踏まえるのがいいと、私は考えていました。

 ところが19年12月、政府は「反社会的勢力」の定義を問われて、〈あらかじめ限定的、かつ、統一的に定義することは困難〉との答弁書を閣議決定しました。〈その形態が多様であり、また、その時々の社会情勢に応じて変化し得る〉から、だそうです。政府が定義を避けたのは、「桜を見る会」にからんだ政治的な理由がありそうですが、それはここでは論じません。

 私はこの決定を知って非常に驚きました。「反社会的勢力」についての政府指針は、すでに企業などが反社と絶縁するための取り組みの基礎となっています。だからこそ、辞書でもこの指針の記述を参考にするのがいいと考えていました。それが今さら〈定義することは困難〉とはどういうこと?

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