リーチ_マイケル

日本ラグビー W杯の大成功の次は運営のプロ化にトライ!

文・大友信彦(スポーツライター)

 ラグビーのプロリーグを立ち上げる――日本ラグビー協会の新しい副会長に就任した清宮克幸がこうブチ上げたのは2019年7月28日だった。森重隆新会長とともに、日本ラグビー界改革の旗手として執行部入りしたのは6月末。そこから1ヶ月弱で、清宮はプロリーグ構想をまとめあげていた。

 プロリーグ化と言えば、多くの人が想像するのはサッカーのJリーグやバスケットボールのbjリーグ(現・Bリーグ)の誕生だろう。そこには選手のプロ化、高収入化というニュアンスも含まれる。清宮副会長も、それを否定しない。

「世界一のプロリーグを作ろうとするんだから、収入の面でも世界一の選手が現れるようなリーグにできたらいいよね」

 だが、それは副次的な要素だ。清宮のプロリーグ構想の核心は運営形態の「高収益モデル化」だ。

 これまでのラグビートップリーグは、企業が経費を負担して運営してきた。社員の士気高揚、企業の社会貢献など大義が掲げられ、そこには利益を上げる/経費を回収するという視点はなかった。テレビドラマ「ノーサイド・ゲーム」で描かれた「利益を求めない」なれ合いの構図は概(おおむ)ね事実だ。そしてドラマで描かれたように、企業の運営形態が変化した現在、直接的に利益を生まない部門は整理・処分される危機に瀕している。

 それに対して「ラグビーにはもっと利益を生みだす力がある」と攻めのスタンスを取るのが清宮構想であり、キーワードが「ワールドカップ(W杯)」だ。

 清宮は「日本のラグビー界にとって最大のレガシー(遺産)はW杯2019そのもの。この資産を活用しない手はない」という。W杯日本大会に世界から大量のファンが押し寄せ、大量のビールを飲み、グッズ購入や観光で消費したことで、日本でも多くの人がラグビー市場の大きさを認識しただろう。同時に、日本のスタジアムの美しさ、街の魅力は、W杯という大会の魅力、日本人のホスピタリティと相乗効果を発揮しながら世界に発信された。清宮はW杯開催12都市を「オリジン12」と命名。この12都市を中心にプロリーグを立ち上げる構想を描いている。

 だがその資産は活用しなければすぐに価値を失ってしまう。世間の関心が東京五輪・パラリンピックに移れば、W杯の資産価値は霧消してしまうだろう。なのにW杯が閉幕したあと、現行のトップリーグはなかなか始まらない。2019年度の開幕は2020年1月12日。2ヶ月ものブランクが生じてしまうのだ(そもそもなぜそんな日程を組んだのかが疑問だが、実はそれを含む無策が日本協会の執行部が刷新される契機になり、現在の森-清宮体制が生まれたわけだ)。

 それゆえ、必要なのはスピード感である。清宮構想では、11月2日にW杯が終了したら即座に参入要件など新リーグの概要を発表。スタートは2021年秋と想定している。

 構想発表から概要発表まで3ヶ月強、そこから発足までの準備期間は2年。決して十分な時間が与えられているわけではない。だが清宮は言うのだ。

「実はこれまでも、トップリーグの代表者会議や実務者協議などで『プロ化するしかないよね』という議事録が積み上がっていたんです。私は『スピード感を出そう』と言っただけ」

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