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【19-政治】安倍政権が終わっても終わっていない森友公文書改ざん事件|相澤冬樹

文・相澤冬樹(ジャーナリスト)

責任逃れをしたいという本音

森友学園への国有地値引きを巡る公文書改ざん事件は、政権を支持する人々にとってどうしても終わったことにしたい一件のようだ。それを象徴する出来事が10月にあった。

財務省近畿財務局で改ざんをさせられ命を絶った赤木俊夫さん。その上司で、休日だった俊夫さんを職場に呼び出し改ざんをさせた池田靖氏がおととし、1周忌の弔問に訪れ妻の赤木雅子さんと話をした。その時の録音データが、赤木さんが国などを訴えた裁判の証拠として大阪地裁に提出された。自らが決めた値引き額8億円に「問題がある」と認め、改ざんは「佐川さん(元財務省理財局長)の判断です」と言い切っている。さらに改ざんについて俊夫さんが整理してまとめたファイルがあり、これを見れば誰の指示でどのように変えたか一目でわかると明かしている。当然、報道各社が大きく伝えた。

ところが、これをまったく違う論調で伝えたのが産経新聞だ。17日付けの産経抄というコラムは、音声データから以下の部分を取り上げた。

「安倍さんとかから声がかかっていたら正直(国有地を)売るのはやめている」

「少しでも野党から突っ込まれるようなことを消したいということでやりました」

産経抄はこれらの発言が安倍前首相の関与を否定するもので、改ざんは野党の追及を避けるためだったと解釈した。その上で、こう締めくくった。

「野党やマスコミは安倍氏夫人の昭恵さんも標的とし、執拗に証人喚問に応じるよう求めた。反省も示さず、いまなお正義の味方面する彼らの鉄面皮が理解できない」

……私にも理解できない。このコラムの執筆者の日本語能力が。紙面に載せた編集長の知性と理性が。

確かに産経抄が指摘するような発言もある。だけど考えてほしい。近畿財務局の職員に首相が直接指示するということがありうるかを。そんなことはあり得ない。もしも意向を伝えるなら官邸の秘書官らを通じて財務省幹部に伝えるはずだ。

そしてこの発言は、部下に改ざんという不正行為を押しつけた上司が、命を絶った部下の妻に語っている。つまり謝罪と言い訳なのだ。すべて聴くとわかるが、申し訳ないという気持ちの傍ら、何とか責任逃れをしたいという本音が感じられる。だから発言のすべてをそのまま真実と受け取るわけにはいかない。すでに明らかになっている事実や、池田氏と赤木俊夫さん雅子さん夫妻との人間関係を踏まえて読み解く必要がある。

産経はその後も作家・門田隆将氏の「事実とは“真逆”の報道」という同趣旨の文章を掲載した。【新聞に喝!】というコラムで。喝は己に入れればよろしかろう。

菅首相にも説明責任はある

同じような主張はネット上にあふれている。その人たちの投稿を見ると、安倍前首相や菅首相が大好きで野党やマスコミが大嫌いだとよくわかる。好きか嫌いかは自由だが事実をねじ曲げてはいけない。

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