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詩 瀬戸内寂聴 百周年記念傑作選

水の声

水の声が聞きたい。古里の家の裏の小川の水の声が。死を待つだけの老人がうわ言をいった。ひ孫の少女がその日から、老人の枕元に坐り、赤い玩具のバケツの水を掬いあげては落しはじめた。少女がつくった小川の囁き。貝殻のように薄い少女の掌の窪みから、水はきらきら輝きながらくり返しバケツに落ちていく。さらさらと、さらさらさらとひっそりと、日がな一日さらさらと。(1992年2月号)

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