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北京で『文藝春秋』を読んできた|劉檸

文・劉檸(作家・北京在住)

昔から日本の雑誌、とりわけ月刊誌を読むのが好きでした。東京にいた頃は、書店の雑誌コーナーで最新号をチェックして気になるものを購入していました。御茶ノ水の丸善、新宿東口の紀伊國屋書店本店、神保町の三省堂とその近所にある東京堂ふくろう店(当時)、池袋東口のジュンク堂本店は、どこもよく足を運びました。

ところが帰国後は、中国から定期購読するしかありません。1990年代から2000年代初め頃の北京で外国雑誌を購読するには、唯一の合法的なルートである中国図書進出口公司(中図)を通す以外になく、すると送料だけでなく輸入関税やコミッションもかかり、かなりの高額になりました。しかしその頃の私は、外資系企業のホワイトカラーとして働きながら、中国南方系メディアのコラムニストも務めていたので、ダブルの収入源を元に、多い時は『文藝春秋』『世界』『論座』『外交フォーラム』『芸術新潮』の5誌を同時購読していました。

ただ実は『文藝春秋』と『論座』は、厳密な意味で購読していたわけではありません。東京の私立大学で教鞭をとる私の生涯の学術パートナーで友人であるJ女史が送り続けてくれたのです。彼女と私の間には、中国語と日本語の学術資料を定期的に交換する、という約束があり、2005年の秋以降、北京と東京の間で、平均して毎月1つの段ボール箱を送り合ってきて、パンデミック下でも、頻度は減りましたが、途切れることなく続いています。

この「友情連絡便」で『文藝春秋』は必須コンテンツです。私の北京の書斎には、欠号なしで11年分の『文藝春秋』が保管されています。その後、蔵書スペースの問題が生じ、4年前から“全号購読”は止めましたが、毎年少なくとも2冊は必ず入手しています。3月号と9月号で、芥川賞作品の全文が掲載されているからです。

まず“前”と“後”の両端から読み始めるのが、私の『文藝春秋』の読み方です。

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