「長男接待問題」「ワクチン接種遅れ」で菅の解散権は封じ込められた
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「長男接待問題」「ワクチン接種遅れ」で菅の解散権は封じ込められた

人気凋落のところに痛すぎるワクチン接種遅れ。/文・赤坂太郎

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▶︎菅の国際舞台における存在感の希薄さが露呈している。事前説明していた内容すら発言できない状態
▶︎ある議員は選挙ポスターについて「地元の地方議員との2連にしようかと思っている」と話す
▶︎接種計画の遅れは菅の解散戦略に狂いを生じさせた。今、解散に踏み切れば「コロナ軽視」の批判を浴びかねない

菅政権と中国

「中国には市場歪曲的な補助金や知的財産をはじめとする諸問題がある」

――これは2月19日深夜、菅義偉首相が初参加となった先進7カ国(G7)首脳テレビ会議で発言するはずだったものだ。会議の中心議題である経済問題で、中国の国際ルール無視を指弾する狙いだ。岡田直樹官房副長官は菅が言及すると報道陣に事前説明しており、会議終了後に外務省が「首相の発言内容は予定通りだった」とした。だが、15分後、中国批判を含む多くの部分に関し「首相は発言しなかった」と訂正し、幻の内容に終わった。

訂正後、岡田は「出席者の話が長く、予定していた発言ができなかった」と釈明した。出席者によると、バイデン米大統領が中国の安全保障上の脅威を指摘。それに沿い、菅が予定と異なり発したのは、東・南シナ海における中国の一方的な現状変更の試みへの懸念だった。中国海警局の公船が尖閣周辺で領海侵入を繰り返す現状下、一見、時宜を得た発言にも見える。

ただここで露わになったのが、菅の国際舞台における存在感の希薄さだ。事前説明していた内容すら発言できない。予定しながら触れられなかった中には、政権の看板政策「グリーン」や「デジタル」なども含まれる。

菅は会議後、記者団に「何となく親近感を得ることができた」と述べたが、外務省関係者は「能天気過ぎる。初めてのマルチ会合で、どういう形で自分が発言していいのか戸惑ったのだろう。安倍晋三前首相ならこういうことはなかった」と嘆息した。

この隠れたドタバタ劇は経済安全保障に取り組む関係者の疑念も増幅させた。「菅は中国に遠慮しているのではないか――」。外形的な安全保障上の問題について言及はするが、菅は経済面で本気で中国と対峙するつもりはないのではないか、という懸念だ。

というのも、菅が北村滋国家安全保障局長らに「経済安全保障の議論は慌てなくていい。訪日外国人に影響が出かねないから」と指示したとされているからだ。昨年7月の骨太方針で官房長官だった菅が主導し「ポストコロナ時代においてもインバウンドは2030年に6000万人」との目標を明記した。訪日外国人の3割、消費の4割弱を中国人が占めており、達成には中国の存在が不可欠だ。この施策は菅政権樹立の立役者でもある親中派の二階俊博自民党幹事長の意向にも合致する。

外交、安全保障に詳しい自民党議員は「中国は観光客を外交戦略に組み込んでいるのに、そんな指示を出していること自体、宰相として定見がなさ過ぎる。会議の流れを利用して意図的に経済政策で中国を刺激するのを避けたと思われても仕方がない」と指摘する。

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菅首相

麻生の消極的“菅支援”

首相としての腰が定まらない菅を懸命に支えようとしているのが副総理兼財務相の麻生太郎だ。G7首脳テレビ会議を前にした2月16日、麻生は官邸を訪れ、外交関係を巡り助言を行っている。安倍政権時には対立することが多かったが、今、麻生は「菅のほかに総理をやれる奴はいない。経験が足りないだけだ」と側近に語る。

年明け早々の1月6日、東京・富ヶ谷にある安倍の自宅に麻生の姿があった。今後の政局を見据え、どういう立ち位置を取るか安倍から相談を持ちかけられたのだ。1時間余りの会談で出された結論が「今は党がまとまることが大事だ。今年も2人で菅を支えていく」ということだった。

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