【85-芸能】サブスクはコロナ禍で地獄に落ちた音楽業界を救えるか|森川潤
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【85-芸能】サブスクはコロナ禍で地獄に落ちた音楽業界を救えるか|森川潤

文・森川潤(NewsPicks 副編集長/NY支局長)

「サブスクが音楽業界を救うのか」

言うまでもなく、新型コロナは音楽業界に壊滅的なダメージをもたらした。近年伸び続けていたライブ興行は封じられ、付随する物販も落ち込む中、この状況がすぐさま回復することは見込めない。

そんな地獄の様相の中で、唯一伸び続けているのが、音楽サブスクリプションである。筆者の住む米国では、有料の音楽サブスクの売り上げは2020年の上半期で前年同期比12%伸び、音楽市場全体の85%を占めるまでになったほどだ。一方でCDの売り上げは落ち込み続け、とうとうレコードにも抜かれてしまった。

その象徴が、全米トップシンガーのテイラー・スウィフトといえるだろう。スウィフトは近年、無料プランを含む音楽サブスクへの新作提供を拒否していたが、17年に方針を転換し、20年7月にはコロナの真っ只中、新アルバム『フォークロア』をサプライズ配信した。

「去年までだったら、自分の曲をいつ“完璧”なタイミングでリリースするかを考えすぎていたかもしれないけれど、今の時代は何一つ保証されていないことに気付かされたの。今は、自分が大好きなものを作ったときは、世界に向けて出してしまえばいいと直感に従っているわ」

スウィフトの狙いどおり、新アルバムは、音楽サブスクにおける再生数の記録を塗り替え続け、自身もアルバムランキングでの累計トップ週で、ホイットニー・ヒューストンを抜いて歴代1位へと上り詰めたほどだ。

スケールは劣るものの、日本でも同様の動きは起き始めている。19年の後半以降、星野源に嵐、サザンオールスターズなど、大物ミュージシャンがサブスクを解禁し、20年8月には今をときめく米津玄師までが参戦したことで、「サブスク上陸から5年、ようやく役者がそろった」と業界関係者も喜びを見せる。

関係者によると、アップル・ミュージックの有料会員数は日本で600万人程度に上り、LINEとスポティファイを合わせて1000万人を突破した。「まず1000万人を超えてからが勝負だったので、これからサブスクの強みが発揮される」とこの業界関係者は打ち明ける。

とはいえ、それで「サブスクが音楽業界を救うのか」と尋ねられると、ことはそう単純ではない。まず重要なのは、日本と欧米では、音楽がサブスクにたどり着くまでの道のりが全く異なることだ。欧米では00年前後から違法のファイル共有ソフトが跋扈し、あらゆる音楽が無料で流通していた。08年にスポティファイがサービスを開始したのも、「違法ダウンロードでより多くの人が音楽を聞くようになったのに、アーティストに還元されていなかったから」と創業者のダニエル・エクは以前、筆者の取材に答えている。つまり、無料が当たり前となった音楽に、新たに収益還元のモデルを持ち込んだのがサブスクなのだ。

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