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【38-経済】意外と目前に迫っていた「デジタル円」が使われる社会|中島真志

文・中島真志(麗澤大学経済学部教授)

中央銀行の焦り

デジタルな通貨と言えば、つい最近まで仮想通貨「ビットコイン」やフェイスブックの「リブラ」などが注目を集めていたが、ここに来て注目が集まっているのが「中央銀行デジタル通貨」(CBDC:Central Bank Digital Currency)である。海外での導入が間近に迫っており、日本でも「デジタル円」の発行に向けた機運が高まっている。はたして中銀デジタル通貨の登場は、われわれの生活やビジネスにいかなるインパクトをもたらすのだろうか?

中銀デジタル通貨とは、中央銀行が発行し、デジタルの形態をとるものである。これは、現金(銀行券)をデジタル化したものだ。現在、多くの国の中央銀行が中銀デジタル通貨の導入に向けて一斉に動き始めている。

なぜ、今、中銀デジタル通貨なのだろうか。一つは、現金での取引にデジタル化社会との不整合が生じていることがある。様々な取引がデジタル化し、リアルタイムでモノの売買などが行われる中で、現金は物理的な受渡しやお釣りの準備が必要だ。つまり、デジタル社会の中で不便で時代遅れな支払手段となりつつあり、そのハンドリング・コスト(取り扱い費用)も高い。また、偽造を防ぎ通貨の安全性を保つ「ブロックチェーン」など、デジタル通貨の実現を可能にするような技術が出てきたことも大きな要因だ。スマホの普及も見逃せない。これは、国民の一人一人が「決済端末」を持ち歩くことを意味するため、国民が幅広く使う支払手段のデジタル化を進めやすくなった。中銀の前のめりの姿勢には、民間デジタル通貨への対抗という背景もある。2019年6月にフェイスブックが「リブラ」の構想を発表したことで、「中銀より先に、民間のデジタル通貨が普及しかねない」という焦りが出てきたのだ。

「中銀デジタル通貨なんて、実現するのはまだ相当先」と思っている方も多いと思われるが、実はそうでもない。国際決済銀行(BIS)の直近の調査によると、世界の中銀のうち、6~7行が3年以内、13~14行が6年以内には、デジタル通貨を発行する予定としている。実は「新たな現実(ニユー・リアリテイ)」は、意外にすぐそこに迫っているのである。

先行しているプロジェクトとしては、中国人民銀行の「デジタル人民元」、カンボジア中銀の「バコン」、バハマ中銀の「サンド・ダラー」、スウェーデン中銀の「eクローナ」などがある。これらの中銀では、全国規模の導入をにらみつつ、すでに店舗や消費者、銀行などが参加して、実際に中銀デジタル通貨を利用するというパイロット実験を行っている。

中銀デジタル通貨は「現金」と同等

こうしたデジタル通貨導入の動きの中で、最も注目を集めているのが、中国人民銀行の「デジタル人民元」だろう。

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