世界経済の革命児 アンソニー・タン 大西康之
見出し画像

世界経済の革命児 アンソニー・タン 大西康之

ジャーナリストの大西康之さんが、世界で活躍する“破格の経営者たち”を描く人物評伝シリーズ。今月紹介するのは、アンソニー・タン(Anthony Tan、Grab創業者CEO)です。

202005 世界経済の革命児顔写真(アンソニー・タン)※アマナから取りました

アンソニー・タン

孫正義が認めた東南アジアの「決済王」

レンタルオフィスの「ウィーワーク」、格安ホテルチェーンの「OYO(オヨ)ルームズ」、配車アプリの「ウーバー」。ソフトバンクグループは、主な投資先が次々と経営不振に陥り、4兆円超の資産売却に追い込まれた。傷心の孫正義社長の心の支えはいまや、この若者かもしれない。

シンガポールに本拠を置く配車アプリ「Grab(グラブ)」の創業者CEO、アンソニー・タン。創業からわずか7年で、同社の企業価値を140億ドル(約1兆5000億円)にまで高めた男だ。会社が世に出た頃は、「東南アジアのウーバー」と呼ばれた。しかし38歳にして400億円超の個人資産を築いた起業家は、微笑みながらこう語る。

「僕らのライバルはキャッシュ(現金)ですかね」

資金繰りの話をしているのではない。スマートフォンでタクシーを呼ぶ配車アプリのサービスは、タンにとって顧客基盤を整えるための「撒き餌」に過ぎなかった。創業から6年が経つと、東南アジアに進出していたウーバーを返り討ちにして同地域の配車アプリ市場で首位に立ち、8カ国168都市で230万人のドライバーを抱えるまでになった。だが本命は配車アプリではなく、2015年に始めた電子決済サービス「グラブペイ」だ。

タンが配車アプリを立ち上げた2012年のマレーシアでは、スマホを操れるドライバーはほとんどおらず、タクシーに乗る客の多くはクレジットカードを持っていなかった。タンはドライバーを相手にスマホの講習会を開きながら、クアラルンプールにスマホが浸透するタイミングをじっと待った。そしてスマホが行き渡ったタイミングを見計らって、グラブペイを導入したのだ。クレジットカードやオンラインバンキング、ATMのほか、コンビニでも入金できる。この「デジタルウォレット(電子財布)機能」は瞬く間に東南アジアの人々に広がり、「現金」に置き換わり始めた。だから、「キャッシュがライバル」なのだ。

この続きをみるには

この続き: 991文字
この記事が含まれているマガジンを購読する
月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に幅広いテーマの記事を配信しています。政治家や経営者のインタビュー、芸能人の対談、作家のエッセイ、渾身の調査報道、一流作家の連載小説、心揺さぶるノンフィクション……月額900円でビジネスにも役立つ幅広い「教養」が身につきます。

文藝春秋digital

月額900円

一流の作家や知識人、ジャーナリストによる記事・論考・ルポルタージュなどを毎日配信。執筆陣のオンラインイベントも毎月開催中。月額900円で記…

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
文藝春秋digital

記事へのご意見・ご感想をお待ちしています。「#みんなの文藝春秋」をつけてご自身のnoteにお書きください。編集部がマガジンにピックアップします。皆さんの投稿、お待ちしています!

ありがとうございます!
月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に、一流の作家や知識人による記事・論考を毎日配信。執筆陣のオンラインイベントも毎月開催中。月額900円で記事読み放題&イベント見放題のサービスです。