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東京五輪「ゴルフ」は、同世代ライバルたちの競演に注目!

前回大会のリオ五輪で112年ぶりに復活したゴルフ。東京五輪の出場選手は6月に決定する。「黄金世代」と呼ばれる、全英オープン優勝の渋野と米ツアー3勝の畑岡。男子はともに27歳の今平と松山など、同世代が競い合う日本勢。五輪の舞台に立つのは誰か、レジェンド青木功氏が語る。

【青木功が注目するゴルファーは?】

「私が若いときにゴルフがオリンピック競技だったら、そりゃあ出場したかったよ。五輪に向かっていける今のゴルファーはすごく幸せだと思う」

 そう語るのは、日本ゴルフツアー機構会長で、ツアー通算51勝の青木功氏だ。

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青木功氏

 東京五輪のゴルフ競技が、男子は今年7月30日から、女子は8月5日から行われる。参加資格を得るのは、国際ゴルフ連盟が定めたオリンピックランキングを基に選出される男女それぞれ60名。日本女子勢は、畑岡奈紗、渋野日向子の21歳と同い年のペアがそれぞれ5位と11位、鈴木愛(25)が13位、男子も同世代の松山英樹(27)が14位、2年連続賞金王の今平周吾(27)が19位にランクインしている(1月20日時点)。注目の選手について、青木氏が解説する。

「出場したら面白いだろうなっていう選手は何人かいるけど、今年6月に出場が決定するときに活躍してる選手がいいな。去年の調子はあくまでも去年の話だから。あとは海外の選手と回った実績があるかどうかだね。

 奈紗はアメリカツアーで3勝、日向子は全英で優勝した。2人とも向こうっ気が強いのが持ち味だな。

 日向子は男子プロ並みに体幹がいいんだ。帝王、ジャック・ニクラウスと同じように、顎を後ろに下げて重心を右に移す“チンバック”の動作が特徴的。この前本人と話したんだけど、五輪に出るからといって、スイングなんかを変えたりせずに、23歳ぐらいまでは今のゴルフを維持するのが大切だと伝えた。どうせ体は成長して変わるんだから、今しかできないものを磨いた方がいい。

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渋野日向子氏

 奈紗も3年位前、壁にぶつかっていた。体の開きが狭くなってスライスばかりしていた。だけど今、また飛ぶようになったでしょう。壁にぶつかって考えたんだね。直接私が本人にアドバイスすると迷ってしまうかもしれない。だから、こういう雑誌のような場でアドバイスするのは、考える素材として、彼女たちに気付いてほしいからでもあるんだよ。

 男子で言うと、松山英樹は『なんで俺はこんだけ練習したのにできねえんだろうな』ってイライラした様子が見える。機械のように無心で球を打ちたいんだろうな。私は松山みたいに、ゴルフをジュニア時代から習っていたわけじゃなく、野球やバスケットでも遊んでいた。松山に限った話ではないけど、小さい頃から1つのスポーツだけに集中していると、多少うぬぼれて足をすくわれる部分があるのかもしれない。

 今平はもうちょっと体幹を太くした方が良い。賞金王にはなったけど、最終日が悪いことが多いだろう。最終日に持て余すくらいの体力がないと疲れてしまう。体を太くして、絞って、更に体幹を強くしていく。それから、完成した体にあったスイングを作るのが良いだろうね。

 選手会長の(石川)遼も、『日本代表に入りたい』と言っているだろう。ツアー17勝はだてじゃないんだから、経験を活かしてほしいね」

 栄えある五輪の舞台は、名門の霞ヶ関カンツリー倶楽部東コースだ。埼玉県川越市にあり、2017年に来日したトランプ大統領と安倍総理がプレーしたことでも知られる。

「実は、改修後の東コースはまだ行ったことがないんだ。川越は1年の寒暖差も大きいし、芝を育てるグリーンキーパーも頭を悩ますと思う。でも、いいコースに仕上がってると聞いているから、会長としては1度見ておかないとね。1度コースを回れば、どんなタイプの選手が向いてるか、想像もできる。

 私がプロとして試合で勝てるようになったときは、朝起きたら必ずホテルの窓をパッと開けて、この風だったら7番使おうとか瞬時に考えていた。ドローンを飛ばすように、鳥の目でコースの全体を把握していたんだ。ゴルフは頭を使わないとできないスポーツだから、彼らにもぜひそういう判断力を磨いてほしいね」

渋野日向子 Hinako Shibuno

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2019年全英女子オープンで優勝したスマイル・シンデレラ。2008年北京五輪でのソフトボールの金メダルを見て、自分もこういう舞台に立ちたいと思ったという。

畑岡奈紗 Nasa Hataoka

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高校生で単身渡米し現在までに米ツアー3勝。20歳での国内メジャー4勝は史上最年少だ。ヘッドスピードの速さが持ち味。

鈴木愛 Ai Suzuki

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2019年賞金女王。風を読み間違えたキャディーを記者会見で責めるなど、勝利への貪欲さを隠さない、黄金世代の「壁」。

松山英樹 Hideki Matsuyama

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リオ五輪はジカ熱の危険性のため出場辞退しテレビ観戦した。霞ヶ関CCは、西コースではあるが2010年、アジアアマチュア選手権で優勝し、マスターズ出場権を得た相性のいいコース。

今平周吾 Shugo Imahira

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2019年、史上最年少で2年連続賞金王に。しかし、昨季出場した海外メジャーは4試合すべて予選落ちで、不安も残る。

石川遼 Ryo Ishikawa

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史上最年少28歳で生涯獲得賞金10億円に到達。五輪出場については「可能性ある限りは最後まであきらめない」と語る。

タイガー・ウッズ Tiger Woods

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2010年以降、自身のスキャンダルもあり、調子を落としていた。しかし2019年、マスターズとZOZOチャンピオンシップの優勝で復活を遂げた。

ロリー・マキロイ Rory McIlroy

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16歳で学業から離れゴルフに専念。全米・全英オープン、全米プロを制覇し、残る4大メジャータイトルはマスターズのみ。

霞ヶ関CC

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2015年10月から約1年かけて改修を施した。国際ゴルフ連盟の要請を受けてオーガスタ・ナショナルGCとほぼ同じ総距離への延長や、バンカーの位置変更を行い、世界基準の難易度に。グリーンはベント芝、バンカーの砂は天竜川の乾燥砂で、目玉ができにくい。

photo by Wataru Murakami/Taku Miyamoto/Hiromu Sasaki



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