佐藤優のベストセラーで読む日本の近現代史 『ナショナリズムの美徳』 ヨラム・ハゾニー
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佐藤優のベストセラーで読む日本の近現代史 『ナショナリズムの美徳』 ヨラム・ハゾニー

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グローバル化以後の世界のあり方を示す

コロナ禍がもたらした大きな変化が2つある。

第1はグローバリゼーションに歯止めがかかったことだ。国境の壁が、新型コロナウイルス感染症が蔓延する前よりも高くなった。そして国家機能が強化された。先進国において国家の機能は司法、立法、行政に分けられるが、コロナ禍で行政が優位に立つようになった。急激な変化に対応するためには、議会や裁判所を噛ませずに政府が独断専行することが国家と国民を守るために必要だからだ。

岸田文雄首相は経済安全保障を強調する。

〈岸田は自らが率いる政権で日中関係をどう形作っていくのか。その試金石になるのが、新たに担当閣僚を設けた、安全保障と経済戦略を融合した「経済安全保障」だ。岸田は所信表明演説で「戦略物資の確保や技術流出の防止に向けた取り組みを進め、自律的な経済構造を実現する」と関連法案を策定する考えを示したが、念頭に置くのが中国への対応だからだ〉(10月19日「朝日新聞」)

経済的観点からは、中国との協力が有利な場合でも、安全保障上、日本にとってのマイナスが想定される場合は、国家が介入し、経済活動を抑制するというのが経済安全保障だ。

コロナ禍による第2の変化は格差の拡大だ。格差は、国家間、階級間、ジェンダー間という三重の構造を持っている。経済的に弱い地域でのシングルマザーで非正規雇用の状態の人が最も苦しい立場に置かれる。

岸田首相は分配を強調するが、その目的は格差を是正することだ。10月8日、岸田首相は衆参両院本会議で所信表明演説を行い、成長と共に分配を強調した。

〈新自由主義的な政策については、富めるものと、富まざるものとの深刻な分断を生んだ、といった弊害が指摘されています。世界では、健全な民主主義の中核である中間層を守り、気候変動などの地球規模の危機に備え、企業と政府が大胆な投資をしていく。そうした、新しい時代の資本主義経済を模索する動きが始まっています。/今こそ、我が国も、新しい資本主義を起動し、実現していこうではありませんか。/「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」。これがコンセプトです〉(10月9日「朝日新聞」)

分配政策で格差を是正する過程でも国家機能が強化される。もっとも国家機能の強化は、コロナ禍前にも米国のトランプ政権の誕生、英国のEU(欧州連合)からの離脱という形で現れていた。

聖書に反映された世界観

グローバリゼーションに歯止めがかかり、国家機能が強化される必然性を理論的に説明したのが、イスラエルの(旧約)聖書学者、政治学者で哲学者のヨラム・ハゾニーだ。ハゾニーは政治における価値観を2つに分ける。

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