日本郵政「パワハラ潰し」卑劣な手口 藤田知也
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日本郵政「パワハラ潰し」卑劣な手口 藤田知也

「内部通報の犯人を捜す」「絶対に潰す」──。全国郵便局長会の隠蔽体質と政治力に迫る。/文・藤田知也(朝日新聞経済部記者)

約1万9000人の局長会

詐欺、収賄、横領、経費の不正請求……。郵政創業150年という記念すべき年に、郵便局長による不祥事が相次いで発覚している。

日本郵政グループは一昨年のかんぽ生命保険の不正販売問題、昨年のゆうちょ銀行の不正引き出し問題によって信頼を失墜させてきたが、今度は郵便局長たちがダメを押してコンプライアンスや企業ガバナンスの欠如を露呈させている。

長崎県では、多数の顧客から20年以上にわたり、12億円超をだまし取っていた60代の元郵便局長が6月14日に逮捕された。同月29日には、かんぽ生命の顧客情報を元同僚が勤める保険代理店に流し、見返りに現金を受け取っていた熊本県の40代の局長も逮捕された。

愛媛県の郵便局では6月23日、抜き打ちの調査当日に局長が抜け出して死亡し、2億4000万円を着服していたことがのちに判明した。大阪府では、10人近い局長が会議費用の不正請求に絡み、飲食費などに使い込んでいた事案まで浮上している。

これらの事件はいずれも「旧特定郵便局」を舞台に、その局長たちによって引き起こされたものだ——。

旧特定郵便局は全国に約1万9000局あり、日本郵便が直営する約2万局の大部分を占める。明治初期、資金が乏しかった日本政府に代わり、地方の名士の私財提供によって作られた郵便局網がルーツ。小規模局が中心で、2007年の民営化で名称を変えたあとも、大型の旧普通郵便局とは区別して運用されている。

彼らの業務と密接に結びつくのが、約1万9000人の現役局長らで構成する任意団体の局長会だ。「全国郵便局長会」を頂点に、12の地方郵便局長会、約240の地区郵便局長会、約1600の部会で構成されるピラミッド組織。詳しくは後述するが、“国内最強の集票マシーン”という別の顔も持つ。その政治的な背景を武器に、郵政グループの経営にも強い影響力を持ち続けているとみられながら、詳細はこれまでベールに包まれていた。

頻発する局長犯罪のなかで、とくにグループ経営に強烈な打撃を与え、局長会の異質な体質も浮かぶ事件がある。福岡地裁が6月8日、局長会の有力幹部だった元郵便局長に懲役1年執行猶予3年の有罪判決を下した強要未遂事件だ。

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日本郵政の増田寛也社長

恐怖の内部通報者捜し

「どんなことがあっても仲間を疑わん。これが特定局長の鉄則。してないな、そんなこと? もしあったときは、おれんぞ」

福岡県小竹町の新多郵便局で2019年1月24日、局長の西村光晶(64)の迫力ある声が、ICレコーダーで記録されていた。

西村は日本郵便で九州支社副主幹統括局長、局長会では九州地方郵便局長会副会長という要職を務め、旧特定局長としては九州ナンバー2の座にあった。同時に、日本郵便で筑前東部地区連絡会の地区統括局長、局長会では地区郵便局長会の会長も兼ねていた。その配下の郵便局長がうめき声をあげる前で、西村は「会社はダメちゅうけど、犯人を捜す」と迫ったのだ。

捜していた“犯人”とは、別の郵便局長を務める息子の不祥事を3カ月前、日本郵便本社へ知らせた内部通報者だ。息子は“証拠不十分”で不問とされ、西村はコンプライアンス担当役員から得た情報をもとに、通報者は「地区内の局長五人」と踏み、疑わしい局長を呼び出して「クビ賭けきぃか?」と締め上げた。

「社員ならいいけど、局長の名前がのっちょったら、そいつらは俺が辞めた後も絶対潰す。絶対どんなことがあっても潰す。辞めさせるまで追い込むぞ、俺は」

「名前がのっちょったヤツをオマエは知らんか? 後で絶対オマエの名前は出てこないな? 約束ばい。いま俺の言ったこと、そげんなるよ」

そんな恫喝が1時間以上続き、最後は情報を上げるよう念押しして終わった。罪に問われた行為はこの一件だが、前後にも複数の局長が詰問されていた。通報者がいると疑われた地区で局長らが緊急招集され、部会長から“身の潔白”を一人ずつ示すよう迫られる一幕もあった。

こうした通報者捜しが本社の知るところとなり、西村は2019年3月に戒告処分を受けた。会社と局長会の役職も降りてヒラ局長となったが、本人は1年程度で復帰する心づもりで、後任の統括局長らによる内部通報者への圧迫はその後も続く。

通報に関わった局長のうち2人は、西村への“中傷”などを理由に、地区局長会を除名された。除名されたことを根拠に、会社の役職も外れるよう迫られ、実際に役職を降りた者もいた。局長会幹部から叱責を浴び、うつ病となって休職に追い込まれた人も。局長会に残ったメンバーも、除名した局長と縁を切るか、局長会を脱会するかを迫られた。

2006年施行の公益通報者保護法は、通報者への報復などの不利益な扱いを禁じている。消費者庁策定のガイドラインでは、不利益な扱いがあった場合は当事者の処分はもちろん、不利益の救済・回復を図ることが必要だとしている。来年施行予定の法改正では、通報者の特定につながる情報の守秘義務を担当者に課し、違反すれば罰金が科されることになる。

だが、福岡県で不正をただそうとした通報者らが文字どおりの「村八分」に遭い、不利益を被っている事態を訴えたのに対し、日本郵便のコンプライアンス・人事部門は西村への軽い処分以外に、具体的な手立てを打った形跡がない。局長会の活動は業務外だと突き放し、問題は確認できないと片付けた。そうした仕打ちも受けて局長ら7人が2019年10月、西村と後任の幹部ら計3人に損害賠償を求めて提訴。捜査当局が動き出す事態にまで発展した。

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