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新海誠×RADWIMPS 特別対談――「天気の子」ラストシーンで起きた奇跡

新海誠監督の最新作「天気の子」。音楽を担当したのは前作「君の名は。」の時もタッグを組んだRADWIMPSだ。カップルよりも密に過ごしたという「天気の子」制作期間の1年半を振り返った――/新海誠(映画監督)×RADWIMPS(ロックバンド)

「次は違うものを作りたい」

野田 昨日、大阪のツアーから帰ってきて、その足で試写を観ました。3人で、トランクを持ったまま。

新海 そうだったんだ(笑)。

明け方にメールをいただいたじゃないですか。洋次郎さんが、映画がすごく良かったと褒めてくれて、それを読んで僕はもう1回泣いて眠りました。洋次郎さんは、昨日はあまり寝てないですよね、きっと。

野田 はい、だいぶ興奮していたので。この1年半やってきたことが、全て報われる映画でした。

武田 くわ(桑原)は、観たあと目が赤かった。

桑原 メンバーがいなかったら、もうちょっとちゃんと泣けたんですけど(笑)。

 新海誠監督の最新作『天気の子』が絶賛公開中だ。
 国内興行収入250億円を超え、邦画史上第2位を記録した『君の名は。』から3年。公開前から世界140の国と地域で配給が決定された異例の話題作だ。
 劇中音楽を担当するのは、ロックバンドのRADWIMPS(野田洋次郎さん〈Vo/G/Pf〉、武田祐介さん〈Ba〉、桑原彰さん〈G〉)。新海監督がもともとRADWIMPSのファンだったことがきっかけで『君の名は。』の劇伴を担当。再び新海監督とタッグを組んだ今作は、前作以上に監督と話し合いを重ね、主題歌5曲を含む全31曲を作り上げた。


新海 脚本ができたとき、洋次郎さんにメールでお送りしたのが全ての始まりでしたね。

野田 僕、なんて返しましたっけね?

新海 一言だけ覚えているのは、「新海さんは詩人なんだなと思いました」と。いや、詩人はあなたじゃないですかって思ったんですけど(笑)。

野田 そうでした、そうでした。

新海 そのメールから2、3カ月後くらいに、映画の主題歌になる「愛にできることはまだあるかい」と「大丈夫」の2曲が送られてきて、これこそ僕が欲しかった「感想」だったんだと思いました。結果、なし崩しに依頼したことになってしまったんですが。

野田 曲を送ったあとに音楽監督の話をいただいたので、試験で合格したような気持ちになりました(笑)。

新海 いやいや、そんなつもりは全くなかったんですけど(笑)。

『君の名は。』の後、次の作品で音楽をどのようにしていくかは、ものすごく大きな問いであり、課題であり、答えなんてないし、想像もつかなかった。少なくとも『君の名は。』を終えたときは、またいつか一生に一度ぐらいは一緒に映画を作るかもしれないけれど、連続はないんじゃないかという気分は、なんとなく共有していましたよね。

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新海誠監督

野田 そうですね。

新海 「次は違うものを作りたい」という気持ちがお互いにあったと思います。でも、脚本を書き終わって、もう少し具体的に作っていかなければいけない時に、ただ純粋に洋次郎さんに読んでもらいたいと思ったんです。洋次郎さんが脚本を読んで聞こえる音はどんなものなんだろう、例えば洋次郎さんが「音楽は誰々に頼んだらいいんじゃない?」とアドバイスをくれたりしたら、考えるきっかけになるし、みたいな気分もあったんだと思います。

野田 脚本を読んで、まずは「新海さんらしいな」と思いました。一方で意外性もあって、すごく攻めていた。あれだけのヒットを飛ばしたあとなので、「マス(大衆)に向けた物語を描くのかな」と思っていたら、賛否を巻き起こすような内容でした。「ここでこういう風に攻めるんだ、この人は」と、驚かされましたし、グッときました。

『君の名は。』の公開から1年で脚本を書いたことにもびっくりしましたね。公開後も、監督はプロモーションで怒濤の日々を送っていたので。

新海 ああ、そうですね。でも、僕がプロモーションをしている間にも、RADWIMPSはどんどん次に行っているわけですよ。アルバムを出して、テレビに出て。あの人たちはまた新しい音楽を作って、遠いところに行っちゃったという焦りを感じながら眺めていました。

野田 そんな、恐縮です。

『天気の子』は、離島から海を渡って東京に家出をした少年(帆高(ほだか))と、家庭の事情を抱えて下町で弟と2人暮らしをする少女(陽菜(ひな))の物語。
 ある日、陽菜はあることがきっかけで、不思議な能力を宿す。それは、どんな天気でも祈るだけで「晴れ」にする力だった。
 東京の片隅で出会った2人は、生活のために「晴れ」を売るビジネスを始める。運命に翻弄されながらも、帆高と陽菜は自らの生き方を選びとり、やがて「世界のかたち」までも変えてしまう──。

全力で駆ける主人公


新海 昨日の試写に、陽菜を演じた七菜ちゃん(森七菜)も来てくれたんですよ。

野田 来てましたね。入れ違いだったので、彼女の感想は聞けなかったんですけど。

新海 七菜ちゃんは見ものでしたよ。

野田 見ものでしたか(笑)。

新海 壊れたようにボロボロボロボロ泣いて。「泣きすぎて頭が痛い」って言っていました。

野田 感性が鋭いなぁ。

新海 陽菜は、七菜ちゃんに出会えて良かったと思います。

陽菜はまるで「天気」のような女の子。書いていてもちょっとつかみきれないキャラクターでした。どういう気分でこの言葉を言っているのか。人が言ってほしい言葉なのか、あるいは彼女が心から話しているのか。そんなキャラクターに形を与えてくれたのが、七菜ちゃんでした。

野田 彼女は、セリフをぜんぶ自分のものにしますもんね。

新海 帆高も醍醐くん(醍醐虎汰朗)しかありえなかった。

今回の作品では、慎重さとか遠慮とか忖度とか調和みたいなものを一切気にせず、全力で駆けるような主人公を描いてみたいと思ったんです。例えば、普段スマホを使っていても、充電が10%を切ったら焦るじゃないですか。でも、そういうことを一切無視して、自分のバッテリーを誰かのために使い切っちゃうような少年少女の姿を見たかったんです。2人はまさにハマリ役でした。

野田 2人のアフレコ現場に行ったんですけど、彼らの情熱や熱量は凄まじかった。帆高と陽菜のようなまっすぐさがありますね。監督がOKを出しても、まるで何かの訓練生みたいに「もう1回お願いします」と懇願して録り直していて。あの2人を見て、「この映画は大丈夫だ、成功する」と思いました。

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RADWIMPSの野田洋次郎(右)

恋人以上に頻繁なやり取り


新海 『天気の子』での試みの1つが、「RADWIMPSではなく、女性の声で歌を入れる」ということでしたね。これは、洋次郎さんから最初にいただいた提案でした。

野田 はい。この映画を『君の名は。』とは異なる世界観にしたかったですし、違うことをやりたかった。どうやっても前作と比べられるのは分かっていましたから。今回は陽菜が重要な役割を担っているので、陽菜の心の声をちゃんと歌える人、そして陽菜の声で帆高の気持ちを歌える人がいいなと思ったんです。

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