
【79-生活】高栄養価で注目の新しい野菜 その名はマイクログリーン|大島佑介
文・大島佑介(ジャーナリスト)
発芽後1~3週間ほどの若芽
マイクログリーン――。
こう呼ばれる野菜のことを、ご存じだろうか?
最近、フレンチ、イタリアンなどの高級レストランや、外資系ホテルのダイニングで食事をすると、料理の上や周りが、1センチにも満たない小さな葉っぱで彩られていることがある。その葉っぱがマイクログリーン(幼葉野菜)だ。
幼葉野菜は、土やスポンジなどの培地に種を蒔き、発芽後1~3週間ほどの若芽のうちに収穫する。実は日本人に馴染みの深いカイワレ大根も、「ラディッシュ・マイクログリーン」と呼ばれる幼葉野菜の1つである。
アメリカで1980年代から栽培されるようになったマイクログリーンだが、2014年に米農務省が「非常に栄養価の高い野菜」などと評したことで注目され、アメリカをはじめ世界各国で生産者が急増しているのだ。
海外での注目の高さに可能性を感じ、日本でも栽培を始める個人業者が徐々に増えてきている。東京で2年前から栽培・販売をはじめた株式会社エンクロの梶田渥也氏もその一人だ。
カリフォルニア在住だった梶田氏は、約8年前に日本に居を移したが、徐々に都会での暮らしに疲れを感じ、田舎暮らしに憧れるようになったという。
「でも、妻からは東京を離れたくないと反対されました。そんな時にアメリカでマイクログリーンという野菜が話題になっていることを知り、いろいろリサーチしているうちに、通常の野菜の数十倍の栄養素があることを知ってピンときたんです。これなら田舎に移住しなくても、室内で栽培ができるし、ビジネスにもつながるんじゃないかと」
そして、アメリカの有名生産業者らのサイトに会員登録して栽培方法を習得し、2年前にマイクログリーンを栽培・販売する会社を起業した。
「今では直販のほかに、豊洲市場の卸業者を介して、都内の外資系ホテルとも取引をしています。日本ではまだまだ認知度の低いマイクログリーンですが、ここ数年はマイクログリーンで飾られた料理の写真がインスタグラムなどで広まり、手ごたえを感じています」
海外で注目される前から、幼葉野菜を栽培している生産者も存在する。
埼玉県三郷市の「オオクマ園芸」は14、5年前からマイクログリーンを栽培しているのだが、「取引している銀座の高級フレンチレストランからの要望がきっかけだった」と運営担当者の大熊正樹氏は振り返る。
「もともとベビーリーフを作っていたんですが、銀座の『ロオジエ』の卸業者を介して、(料理の見栄えをよくするために)野菜をもっと小さくできないか? と相談されたのが、幼葉野菜を栽培し始めたきっかけなんです」