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丸の内コンフィデンシャル〈財界インサイドレポート〉
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丸の内コンフィデンシャル〈財界インサイドレポート〉

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日本の経済の中心地、東京・丸の内。敏腕経済記者たちが“マル秘”財界情報を覆面で執筆する。

★「苦肉の策」の評価

「物言う株主」に追いつめられた結果、東芝(綱川智社長)は、会社を3分割すると苦肉の策をひねり出した。

11月12日、東芝は、エネルギーとインフラシステムを手掛けるインフラサービスカンパニーと、ハードディスク駆動装置(HDD)が軸のデバイスカンパニーの二社に事業を分割すると発表。現在の東芝は、出資する半導体大手、キオクシアホールディングス(早坂伸夫社長)などの株式を管理する会社として存続することとなった。

3分割を発表したオンライン会見の冒頭、綱川社長は、「株主価値」「株主還元」を連呼し、「会社解体ではなく、未来に向けた進化だ」と強調。しかし、「物言う株主」の3分割案に対する評価はまったく芳しくない。7%超の東芝株を保有するシンガポールの資産運用会社3Dインベストメント・パートナーズ(長谷川寛家CEO)は、東芝の取締役会と、社外取締役で構成する戦略委員会に対し、「3分割案を支持しない」との公開書簡を送付した。

書簡には「東芝は過去20年間、企業価値を創出できていない。(3分割は)高い確率で同様の問題を抱えた『小さな東芝』を3つ生み出す」など実に辛辣な文言が並ぶ。

東芝の失敗は、綱川氏が前回社長だったときに上場維持にこだわり、エフィッシモ・キャピタル・マネジメント(今井陽一郎代表)などの「物言う株主」60社に6000億円の第三者割当増資を行ったことに端を発する。これで「物言う株主」の発言力が高まった。

そして今年4月に起きたのが英ファンドのCVCキャピタル・パートナーズ(赤池敦史日本法人社長)による買収騒動だ。「『物言う株主』のくびきから抜け出せる妙案だった」(関係者)が、当時の車谷暢昭社長とCVCの不透明な関係を指摘され、車谷氏は引責辞任に追い込まれ、CVCとの交渉は中断となった。その後、株式非公開化を検討するも、経済安全保障の問題がネックとなりこちらも頓挫。そこで出てきたのが3分割案だった。

綱川氏本人は、「スピンオフ(会社分割)の遂行に向けて全力で取り組む」と続投に意欲を滲ませているが、すでに社内では「ポスト綱川」に注目が集まっている。

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★続くチキンレース

関西スーパーマーケット(福谷耕治社長)とエイチ・ツー・オー リテイリング(H2O、荒木直也社長)傘下の食品スーパーとの経営統合に思わぬ横やりが入った。

10月29日に開かれた関西スーパーの臨時株主総会で統合は一旦可決。可決に必要な3分の2の賛成票をわずかに上回った(66.68%)。

だが、そこで事件が起きる。ある株主が、事前の議決権行使で統合に賛成したものの、意思表明が終わったと勘違いしたのか、総会当日に配られた投票用紙に白紙で応えた。すると関西スーパーはこの株主からの申告を受け、「賛成」票として取り扱った。

この事実が明らかになり、反発したのがオーケー(二宮涼太郎社長)。同社は、関西スーパーのTOB(株式公開買い付け)を目指し、H2Oとの統合に反対していた。「株主総会で白紙を出したのなら棄権か無効としてカウントすべき」と申し立てたところ、神戸地裁は経営統合について差し止めの仮処分を決めた。

裁判の争点は、白紙を出した株主が会社側のヒアリングで「棄権ではなく賛成」と意思表明したことが認められるかどうかだった。

だが地裁の判断は一般常識に照らせば当然だろう。これが認められたら「後出しジャンケン」が有効になり、賛否が拮抗する株主総会で収拾がつかなくなるからだ。

関西スーパーのアドバイザーとして臨時株主総会を仕切ったのは、株主総会の常勝軍団を標榜するコンサル会社、アイ・アール ジャパン(寺下史郎社長)だ。だが、同社による一連の対応には疑問の声が上がっている。

現状、関西スーパーに妙案は見当たらない。再び臨時株主総会を開き、統合案に承認を得るしかない。一方のオーケーにしても、子会社にするために必要な三分の二以上の株を取得できるかは不透明である。二社のチキンレースはまだまだ続く。

★連係プレーで引導

2月から8度にわたるシステム障害を起こし、長期にわたる金融庁検査を受けていた

みずほフィナンシャルグループ(FG)の責任問題は、トップ辞任を含む経営陣の刷新で決着した。

2022年4月に坂井辰史FG社長、藤原弘治みずほ銀行頭取が辞任、佐藤康博FG会長も退任が決まった。

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