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大学受験に役立つ古典#4 読書のなかでも「古典」が受験に役立つ理由

文・三宅香帆(文筆家・書評家)

 オッケー、じゃあ「読書」が「テスト」と同じプロセスをたどり、その練習になるのはわかった。けど、「古典」はどうなのよ!? と肩をぶんぶん掴まれそうである。だって、読書に必要なのは「古典」だけじゃない。

 だけど、読書のなかでも「古典」が必要な理由を言おう。

「古典」は、たとえば本屋で積まれているミステリの文庫本や、大人が読むようなビジネス書とは、またちがった特性がある。それは、「調べながら読むことが必要」ってことだ。

 古典は、いま私たちが生きていない時代、遠い過去に綴られたものが多い。つまり、現代を生きる私たちと「文脈」を共有していない。

 文脈、それは背景知識と言えるものでもある。こういうのはうだうだ言う前に実例を見せたほうがいいだろう、たとえば夏目漱石のこの文章を読んでほしい。

「女とは京都からの相乗りである。乗った時から三四郎の目についた。第一色が黒い。三四郎は九州から山陽線に移って、だんだん京大阪へ近づいて来るうちに、女の色が次第に白くなるのでいつのまにか故郷を遠のくような哀れを感じていた」

 夏目漱石が書いた『三四郎』の冒頭部分にある文章だ。しかし、きみがこの文章を読んだとき、思い浮かべる風景は何だろうか? 「相乗り」と書いてあるから、公共交通機関で女性と一緒になったんだろう、ってことは分かる。九州から関西に向かっていることもわかる。ってことは、新幹線の風景なんだろうか?

 ……と、考えたときに、いやいや待て待て、と思うだろう。夏目漱石の時代に、新幹線は、ない。

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