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【イベントレポ】「業務効率化 総点検」コロナ時代に勝利するマネジメントを学べ!

7月29日(水)、文藝春秋オンラインカンファレンス「業務効率化 総点検」が開催された。このイベントでは、リモートワーク、コミュニケーション改善、チームマネジメントなどの業務にITの力を活用する方策とそのメリットについて、専門家の講演を交えながら考察。その模様をギュッと要約してここにお届けする。

コロナを奇貨として、今こそマネジメント改革を

冒頭を飾る基調講演①を行ったのは、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授の夏野剛氏。株式会社ドワンゴ代表取締役社長も務める夏野氏は、「アフターコロナに向けて~日本企業が今取り組むべき課題~」というテーマで熱弁を振るった。

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慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科特別招聘教授 夏野剛氏

コロナ禍以前の25年間はグローバルな規模でIT革命が起こり、それに伴い各国の経済も躍進した。しかし、そこで例外的に取り残されたのが日本である。1996年から2018年にかけての名目GDPの成長率は、米国は155.0%、中国に至っては1441.5%、それ以外の欧州およびアジアの主要国も大きな伸びを見せているのに対し、日本はわずか3.0%。

その原因はデジタル革命に乗り遅れたこと。経済そのものの停滞、社会システムの硬直化、人口構成の高齢化などと相まって、日本企業のIT化はさほど進むことがなかった。技術発展が実らせた果実によって、生産性が向上することがなかったのだ。

夏野氏は、コロナを奇貨として、今こそマネジメント改革を断行することが必要と説き、以下の提案を行った。コロナ以前に戻ることなく、テクノロジーを全面導入し、人事・内規・権限のシステムを刷新し、時間管理からアウトプット管理へと移行せよ。会社の経営陣のメンバーを、年齢・性別・キャリアなどの属性において多様性に富んだ構成に変え、その性格も調整型から決断型へと移行すべし。「自分の力」をつけ、兼業・副業を積極的に行い、ワークスタイルを根本からチェンジすべし。

その上で、アフターコロナの日本に残された「唯二」の道は、過去にはなかったイノベーションの創造、それからグローバル市場への大規模進出しかないと語る。

そして、コロナ後に日本を立て直すためには、創造と想像という二つの「そうぞう」を社会の中心価値に据えること、リーダーの甘えを断つことが求められると結論を述べた。

理想のテレワーク環境を構築して、オフィスを「持ち歩こう」

「withコロナ時代の新しいワークスタイルへ」と題し、テーマ講演①を行ったのは、株式会社Fleekdrive取締役社長CEOの上家富隆氏。同社は、「オフィスを持ち歩こう」をコンセプトに、クラウドサービスの販売とサポートを行っている。

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株式会社Fleekdrive 取締役社長 上家富隆氏

上家氏はまず、今年3月17日からほぼ完全テレワークに移行したという同社の取り組みを紹介。その実例を踏まえ、Fleekdriveによるデジタル化とその効果について説明した。

Fleekdriveは、企業向けオンラインストレージ。同サービスを使えば、クラウド上でファイルを安全に一元管理することができるので、テレワークが容易になる。また、ワークフロー機能を備えているため、捺印などの必要がなく、簡単に承認プロセスを回すことが可能。さらに、保管されたファイルをその場で開き、チャット機能でコミュニケーションを取りながら更新することができる。機密性の高低に応じて、フォルダごとにIPアドレスによるアクセス制限を施すことも可能だというのも便利な点だ。

社外とファイルを共有するために、用途やセキュリティレベルに合わせて、5つの方法が用意されているから、メール添付の際の不安要素となるセキュリティやコンプライアンスの問題が解消できる。自社以外のスタッフへのテレワーク対応も万全。協力企業向けのライセンスを用意しているので、コストを抑えつつ社員と同様のテレワーク環境を整備することが可能だ。利用期間も制限できるから、業務委託や派遣の期間に合わせ、Fleekdriveへのアクセスを適宜制御することができる。

まずは、自社にとってハードルが低く、全部門に共通する部分をデジタル化することで、長期的なテレワーク環境を構築できる。その結果、企業の競争力強化、生産性の向上、離職率低下などといったメリットが得られるはず。上家氏は以上のように見通しを語った。

メンバーの活動を「見える化」し、リモートワークの質を向上

テーマ講演②には、「リモートワーク時代に必要な営業マネジメント手法」と題し、株式会社セールスフォース・ドットコム セールスディベロップメント本部エンタープライズ事業部 事業部長の畑中雄太氏が登場。

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株式会社セールスフォース・ドットコム セールス ディベロップメント本部
エンタープライズ事業部 事業部長 畑中 雄太氏

同社は、企業や団体がすべての部署において顧客一人一人の情報を一元的に共有することができる統合CRMプラットフォームを提供している。日々の営業活動において、いかにITを活用して日々の業務を行うべきか、実体験を交えて紹介した。

リモートワークでは、営業メンバーの働く実態が把握しづらくなるが、同社では各自の活動をオンラインで「見える化」し、活動内容やその変化を時間単位で細かく確認している。その結果、在宅勤務への移行後、活動量とそのパフォーマンスは向上したという。

人材育成の面では、営業メンバーの早期育成のため、社内大学「Insight Sales University」をすべてオンライン化して提供している。

そのラーニングの過程においては、3本柱となるコンテンツを適材適所で組み合わせた教育プログラムを利用することとなる。一つ目が、コラボレーションツールであるQuip。このドキュメント共同編集ツールが、オンライン研修を手助けする。二つ目が、自習用動画プラットフォーム。数十分で学べる短編動画のオンライン学習コンテンツを週1、2本のペースで全社に展開している。三つ目が、自己学習ツールであるmyTrailhead。クイズ形式で楽しく自己学習できる仕組みを提供している。その設問は、人材開発部が現場で必要とされる内容を吸い上げて作成したもの。

そして、オンライン上のコミュニケーションにおいて、マネージャーに求められる意識を列挙。定量的なコミュニケーションを心がけること、明確で分かりやすいメッセージを伝えること、「お礼と賞讃」を伝えメンバーを信頼すること、業務効率化を常に考慮することなどが大事であると説いた。

マネジメントのキーワード、「1:N」と「1:1×N」とは?

基調講演②は、ヤフー株式会社の企業内大学であるYahoo!アカデミア学長を務める伊藤羊一氏が語る「リモート時代のマネジメント&コミュニケーション」。

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ヤフー株式会社 コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア学長 / 株式会社ウェイウェイ 代表取締役 伊藤 羊一氏

『1分で話せ』『0秒で動け』といったベストセラーの著者としても知られる伊藤氏は、冒頭、マネジメントとは「管理する」行為ではなく、「なんとかする」行為であると強調。プロジェクトをゴールへとリードする過程で必要なのは、安全・安心な職場にすること、個人のパフォーマンスを最大化すること、プロセスを明確にし導くこと、そしてゴールをチームに共有することであり、それらがチームの力を最大化すると語った。

マネジメントにおいて伊藤氏の掲げるキーワードは「1:N」と「1:1×N」。チームと目標や情報を共有するのが「1:N」、できるだけ多くの人たちと一対一で話すのが「1:1×N」。

1:Nのコミュニケーションの要諦は「どうやったら、聞き手が動くか」を常に意識すること。そのためには、伝える内容がスッキリ・カンタンであり、結論+根拠のロジックがしっかりしており、具体例のイメージがはっきりしており、そこに情熱と自信が込められていることが大事であるという。

そして、1:1×Nにおいては、1on1ミーティングの重要性を説く。この対話は、メンバーのための時間であり、心理的安全性を確保したうえで、メンバーの成長を促し、そのキャリアメイクをサポートする機会になるとのこと。
ヤフーでは現在、社員の95%がテレワークを行っており、そのほとんどが仕事の効率の低下を感じていない。そして、今後はどの程度の出勤ペースがベストかという問いに対しては、週1、2日あるいは週0日という回答が大多数を占めた。

リモートワークが完全に定着しつつある時代、「1:N」と「1:1×N」は、より示唆に富んだ重要な考え方となりそうだ。

「目標」と「実際の仕事」の間に横たわる分断を解消する

テーマ講演③は、「新『働き方』に必要なワークマネジメント」と題し、Asana Japan株式会社の田村元氏が登場した。Asanaは、フェイスブックの初代CTO(チーフ・テクニカル・オフィサー)だったダスティン・モスコヴィッツが2008年に創立した企業。同社が開発した「Asana」は12年にサービスを開始し、13年からは日本でも使われ始めた。

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Asana Japan株式会社 代表取締役 カントリーマネージャー 田村 元氏

Asanaはメールやチャット、フォルダに分散する情報を一か所にまとめ、「誰が、何を、いつまでに」行うのかを管理できるワークマネジメントツール。仕事の可視化や期限、担当者の明確化を行うことで、効率的に仕事を進めることができる。また、100以上の外部ツールと連携することが可能で、メールやファイルなどを取り込み、すべてを一カ所にまとめることができる。 

同社も推進したリモートワークへの移行を経て、より明確に浮かび上がったのは、評価の基準を、労働時間ではなくアウトプットおよびパフォーマンスに変更することの必要性。目標管理がうまくいかなければ、組織は機能不全を起こす。社員が仕事の優先度設定において過ちを犯したり、チーム内で意見の食い違いが生じたり、社員のモチベーションが上がらなかったりといった弊害が生まれる。「目標」と「実際の仕事」の間に横たわる分断に、いかなる形で橋渡しを行うか。そこにこそ、Asanaの設けるゴールがあるのだという。

Asanaは仕事のあり方を以下のように変える。成果や達成が可視化されるので、透明性の高いフェアな評価を受けることができる。自分の仕事と全体の仕事の関連性が目に見えるため、チームへの貢献・メンバーへの貢献を実感できる。そして、どこで仕事をしているかにかかわらず作業が前に進むから、「誰」が「何」を「いつまでに」がすべて分かる。つまり、会社全体の目標からチーム・個人の仕事までを「意味」あるものとして結ぶのだ。
 今までと変わらずに仕事のパフォーマンスを上げるために、今までとは変わる新しい仕事の進め方を行う。Asanaは、次世代のワークスタイルを提案するのである。

パワーでコントロールしない、新たな「経営」のモデルとは?

トリを飾る特別講演を行ったのは、株式会社BIOTOPE代表の佐宗邦威氏。テーマは「個人と組織をつなぐ“生きた意義”の作り方・語り方」。同社は戦略デザインファームとして、ビジョンを起点とした前例のない未来創造を支援。創業からわずか4年で、誰もが知る大企業をはじめ、100社近くのクライアントを抱えているという。

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株式会社BIOTOPE CEO / Chief Strategic Designer 佐宗 邦威氏

この場で佐宗氏が掲げた問いは、「いかにして、パワーでコントロールしない新たな『経営』モデルを作るか?」。

現在は経営者受難の時代だ。リモートワークにおけるモチベーション管理の難しさ、仕事の意義を感じられなかった結果としての従業員の離職、コロナ禍の中で利益を上げると強欲だと思われてしまうのではないかという危惧……。

さらに、社会意義の生み出し方が変わり、デジタル化は加速し、ピラミッド型組織の求心力は低下している。問題が山積する今こそ、「経営」という概念自体を再定義する必要があるのではないかと佐宗氏は訴えた。

新たな経営モデルとしては、以下の3つが提案された。パワーで外発的に動かす軍隊統率型から、思想で内発的に動かす宗教布教型経営へのシフト。思想を発信することで、コミュニティを作り、創発力を高める。そして、オンライン会議を、自分を主語にする語り=ナラティブを活用することによって命令するのではなく、行動を触発する。

なお、BIOTOPEが戦略デザインを手がけた実例としては、人工流れ星事業の開発を行うスタートアップ企業、株式会社ALEのケースが紹介された。その現場では、経営者のビジョンについてのインタビューから始まり、全社員が参加して未来のストーリーを統合するワークショップなど、デザイン、物語作りなど分野横断の創造手法が行われていた。

経営に関する新しいビジョンが数多く提示されたその内容には、多くの聞き手が刺激を受けたのではないだろうか。

(7月29日 オンラインで実施)

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