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【89-スポーツ】白鵬・鶴竜の牙城を崩し 「令和初の横綱」になるのは誰か|佐藤祥子

文・佐藤祥子(相撲ライター)

相撲界は“群雄割拠”の時代

2020年の相撲界は激動の年だった。1月の初場所は、実に20年ぶりという幕尻優勝を果たした德勝龍が話題をさらうが、3月の大阪場所は新型コロナウイルス感染症の影響で“無観客開催”を余儀なくされた。5月場所はウイルス感染拡大に伴う「緊急事態宣言」の延長を受け、中止に。7月場所は、通常ならば名古屋場所となるところを、両国国技館での開催に踏み切る。この場所では、大関から序二段まで陥落し辛酸を舐めた幕尻の照ノ富士が、5年ぶりに賜杯を胸にして相撲ファンを感動させた。そして9月場所は関脇の正代が初優勝し、大関の座を一発で射止める。相撲協会としては興行的に苦しい1年となったが、制限される稽古環境のなかで、力士たちは熱戦を繰り広げていたのだった。

今、相撲界は、誰もに優勝の可能性がある“群雄割拠”の時代を迎えている。その理由のひとつとして、白鵬、鶴竜の両横綱はともに35歳、力の衰えやケガも増え“経年劣化”の状態にあるからだ。

白鵬は3月場所こそ44回目の優勝を果たしたものの、初場所と7月場所は途中休場、9月場所は全休。一方の鶴竜も、休場状況は白鵬とまったく同じだった。華やかで荘厳な横綱土俵入りがない本場所は寂しくもあるが“鬼の居ぬ間に”新しい勢力が力を付けて来た感があり、まさに相撲史を塗り替える勢いなのである。

来たる2021年は、白鵬、鶴竜の両横綱が進退を賭ける年になり、代わって新しい横綱が誕生する可能性は大きい。なかでも注目されるのが、2020年3月に新大関となった朝乃山(高砂部屋)と、9月場所で3人目の大関として名乗りを上げた正代(時津風部屋)だ。

朝乃山は、近畿大学卒業後の2016年3月に、三段目格付け出しで初土俵。身長187センチ、体重174キロと体に恵まれ、右四つの形を得意とする四つ相撲の本格派だ。2019年5月場所で初優勝し、トランプ米大統領から初の大統領杯を授与され、一気にその名を売ったのも記憶に新しい。

師匠である高砂親方(元大関朝潮)が、2020年12月に定年退職を迎えるため、「師匠の定年までに横綱昇進を」と心に秘めて9月場所に臨むものの、その思いが空回りするかのように、初日から3連敗を喫してしまった朝乃山。横綱不在のなか、大関として先頭を走らなければならないプレッシャーもあり、メンタル面の弱さが露呈してしまったようなのだ。9月場所を制して翌場所に綱取りを賭けたいところだったが、10勝5敗の成績で涙を飲んだ。しかし高砂親方は、愛弟子をこう諭していたという。

「俺の定年までに横綱に、などと考えなくていいから。周りが勝手に感動ドラマを期待しているだけだよ(笑)。焦らなくていい。ここから先は本人が本人なりに頑張ればいいだけの話だ」

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