新書時評

武田徹の新書時評――宇宙の広大さと人間の小ささ

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。

 地平線から上る満月は眼の錯覚もあって巨大に見え、月という天体本来の球形に近く感じられる。思わず見惚れてしまった経験のある人も多いだろう。

 そんな月は佐伯和人『月はすごい』(中公新書)によれば可能性の宝庫だという。まず地球に殆ど存在しない鉱物資源が豊富だ。太陽光が一切射さない月面の「永久影」の中は極低温となるので超伝導(電気抵抗がゼロになる)が容易に実現し、地球ではありえない電力の利用法が可能となる等々…。JAXAの月探査プロジェクトに携わる著者は月への移住や、月面基地から更に太陽系の奥深くに宇宙開発が進んでゆく未来像を描く。

 こうした現実の宇宙開発は今後の課題だが、SFはいち早く宇宙を舞台としてきた。稲葉振一郎『銀河帝国は必要か?』(ちくまプリマー新書)は銀河系全体を植民地化した人類の運命を描くアイザック・アシモフのSF小説「銀河帝国興亡史(ファウンデーション・シリーズ)」を教材とした応用倫理学の試みだ。

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