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第83回文藝春秋読者賞発表

受賞作

「十八歳の日の記録」 田辺聖子
財務次官、モノ申す 矢野康治

第83回読者賞は昨年12月6日、選考顧問の片山杜秀氏、本郷和人氏、三浦瑠麗氏の3名と、弊社社長・中部嘉人が、読者の皆さまの投票結果を踏まえて選考にあたり、右記のように決定しました。

「十八歳の日の記録」は親類によって発見された田辺聖子氏(2019年没)の昭和20年4月から22年3月までの日記で、「文学を感じた。ぜひ受賞すべき」と評されました。

矢野康治氏「財務次官、モノ申す」は、現職の財務次官が「このままでは国家財政は破綻する」とバラマキ政策を批判したもので、「言うべき立場の人が職を賭して発言している」と評されました。

ご投票いただいた読者の皆さまに感謝いたします。

30名の方に、それぞれ現金1万円をお贈りいたします。このほか100名の方に図書カード(3000円分)をお贈りいたします。

なお、氏名の発表は図書カードの発送をもって代えさせていただきます。

【受賞の言葉】

田辺美奈(田辺聖子・姪)「伯母を培った十八歳の日々」

このたびは文藝春秋読者賞を戴くことになり、大変ありがたく思っております。

伯母、田辺聖子の小説は、「読みやすくユーモアと娯楽性に溢れたもの」と評されることが多いのですが、実のところ伯母は政治問題にも非常に関心が深く、遺された大量のスクラップブックには、カンボジア内戦や、北朝鮮の拉致問題に関する記事が丹念に集められていました。こうした硬派・田辺聖子を培ったのは、この日記に記された十八歳の日々だったのではないかと思います。多くの方に読んで戴くことで、戦争がいかに人々の生活や人生を狂わせてしまうかをお伝えすることができて、伯母も喜んでいると思います。

松井一晃編集長に、文庫編集部の山口由紀子さんを通して日記発見をお伝えしたところ、ご覧いただいたその場で、掲載と書籍化を決めて下さいました。掲載にあたり本誌編集部の鈴木康介さん、神山未月さんに、書籍化では、柘植学さん、大久保明子さん書籍編集部の皆様に大変お世話になりました。感謝申し上げます。

矢野康治(財務事務次官)「謙虚にひたむきに」

矢野康治 (2)

矢野氏

このたびの「文藝春秋読者賞」の受賞、誠に恐れ入ります。

今回の寄稿は、実に不可思議な経緯で、ものに憑かれたかの如く、突き動かされた感が多々ありました。

いろいろご𠮟責も頂戴いたしましたので、受賞はお断りすべきかとも思いましたが、この受賞は、読者の皆様がお決めになるものであり、今回の受賞は、読者の方々、ひいては有権者ないし国民の皆様の健全で賢明な良識の証であって、受賞を拒否することは、その証を無きものとし、その証に対して背を向けることとなりますので、その非礼だけは許されないと存じ、恐れながらお受けすることとさせていただきました。

なお、賞金と賞品につきましては、当然ながら、原稿料と同様、ご辞退させていただきます。

寄稿文の最後でも申し述べさせていただきましたが、今後も謙虚にひたむきに、知性と理性を研ぎ澄ませて、財政再建に取り組んでいきたいと思っております。どうもありがとうございました。

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