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新天皇・雅子皇后の素顔「言の葉を重んずる」

陛下はお酒、雅子さまは生き物が大好き。ご出産秘話から御所の中の私生活まで……新天皇・皇后おふたりに接した人々が素顔を明かす。

文・尾田栄章(元建設省河川局長)

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 天皇陛下は常に春風駘蕩(しゆんぷうたいとう)、己への厳しさは外には出されない。

 本年4月発刊の御著『水運史から世界の水へ』では、1987年、ネパールのポカラ郊外で目にされた光景―わずかの水を求めて多くの女性や子供たちが集まっている様子を「私が水問題を考える時にいつも脳裏に浮かぶものであり、私の取り組みの原点となっているように思います」と記されている。この「原点」の2文字に私は驚かされた。

 自ら撮られた写真を最初に使われたのは2007年、別府で開催の「第1回アジア・太平洋水サミット」の記念講演。写真を示しつつ、「本当に大変だなと素朴な感想を抱いたことを記憶しています」と述べられた。

 20年前に撮影の映像を思い出されたのは、同サミットの主要テーマ、水とジェンダーや子供の教育について議論していた時のこと。突如思い出して書庫から探し出されたのだ。当時、記念講演に向けてご相談に与っていた私は、写真を拝見して、「この光景こそ殿下が世界の水を考えられるときの原点。強調されては」と強くお勧めしたが、陛下はあくまでも「素朴な感想」との表現に留められた。さすがは陛下、言葉が躍らないと敬服したがいささかの違和感は残った。

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