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「愛子天皇を認めるべきか」性別に関係なく人物本位 それが新しい流れ

1つのテーマで対論を読んで思考力を鍛えよう。このコラムのテーマは【愛子天皇を認めるべきか】です。
★対論を読む

文・河西秀哉(名古屋大学大学院人文学研究科准教授)

 女性天皇・女系天皇を認める方向性を検討することが、今、急務ではないか。女性天皇とは文字どおり、性別が女性の天皇を指す。日本では過去、10代8人(2人は重祚(ちようそ))の女性天皇が存在した。古代に8人、近世に2人である。一方、女系天皇は天皇の血を女性から受け継いだ天皇のことを指す。ここでは天皇の性別は関係ない。男系・女系がわかりにくい場合、父系・母系と言い換えてもよいのかもしれない。

 よく、天皇は女性天皇が過去に存在したとはいえ、男系のみが継いできたと言われる。初の女性天皇であった推古天皇は欽明天皇の皇女であり、男性から天皇の血を受け継いでいる。つまり男系である。男系で紡いできた「万世一系」の家柄である天皇の「伝統」を守らなければならない、それが男系男子にこだわる人々の主張である。

 しかし、たとえば大化の改新で有名な天智天皇やその弟である天武天皇は父親の舒明天皇も母親の皇極(こうぎよく)(斉明)天皇もともに天皇であり、父親からのみ天皇の血を受け継いだわけではなかった。それゆえ、男系とだけ見るのは適切ではないのではないか。母親である皇極(斉明)天皇からも天皇の血を受け継いだ女系であると見てもよいように思われる(それゆえ、この場合双系というときもある)。

 性別の男性/女性、天皇の血を受け継いだ男系/女系、これらの概念を組み合わせると、男系男子、男系女子、女系男子、女系女子の4つのパターンができることがわかる。しかし、皇室典範においては、男系男子のみが天皇となることができると規定されている。

 現在のように男性しか天皇になれないという規定は、明治時代に決められたものである。明治の日本は、それまでの「鎖国」によって自らはヨーロッパよりも遅れていると認識しており、植民地にならないため、そして追いついて国際関係で肩を並べるため、国民を統一し、より強く国家をまとめ上げる必要があった。

 そのための方策として明治政府は、国民に家制度を定着させようとした。それは家長である戸主を中心にした集合体で、戸主の統率によって家のまとまりを強固にし、それを国家のまとまりにつなげようとしたものである。そうした制度は、江戸時代の武士の家父長制的な伝統を引き継いでおり、基本的には戸主は男性とされる。こうして、明治期に制定された民法のなかで、絶対的な権限を持つ戸主が規定され、家制度ができあがった。

 国民には男性が家長であると言っているわけだから、国のトップが女性だと示しがつかなくなる。そこで、旧皇室典範においても天皇を男性に限定した。そしてここで、「万世一系」の概念が形成されたのである。

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