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「過去の箱」と「未来の箱」——ベテランと若手が対話するために|荒木博行

文・荒木博行(あらき ひろゆき)
株式会社学びデザイン 代表取締役社長
株式会社フライヤー アドバイザー兼エバンジェリスト
株式会社ニューズピックス NewsPicksエバンジェリスト
武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所 客員研究員
株式会社絵本ナビ 社外監査役
住友商事、グロービス(経営大学院副研究科長)を経て現職。著書に『藁を手に旅に出よう』(文藝春秋)、『見るだけでわかる! ビジネス書図鑑』、『見るだけでわかる!ビジネス書図鑑 これからの教養編』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『世界「倒産」図鑑』(日経BP)など。Voicy「荒木博行のbook cafe」毎朝放送中。

コロナによって大きく傾き始めた本業の経営。この逆風下の環境を踏まえて、会議で新しいビジネスを提案してみた。まだまだ経験は少ないが、アフターコロナを見据えて自分なりに考えたビジネスプランだ。会議の序盤は、若手を中心に評判は上々だった。ところが……終盤でのベテラン社員からの強烈な一言で流れは変わる。

「これは筋が悪いぞ。俺もかつて同じことをやって失敗したからな」

そして、畳みかけるように、「過去にもA社が参入して撤退したけどそれは調べたのか?」「もしやるとした場合、今まで築いた取引先との関係はどうなる?」という質問を浴びせられ、しどろもどろとなっているうちに新しいビジネスの儚い芽は潰えていった。

「筋悪と言う前にやってみなくては分からないじゃないか! 今と昔では環境は変わっているんだ!」という言葉をグッと飲み込みこんだまま、会議は冷めた雰囲気で終了した。

***

これは一つの極端な架空のケースだが、似たような経験をした人もいるのではないだろうか。

ベテラン社員の頭が固い、マウンティング気質が時代遅れだ……などと言いたくなる。でも問題はそれだけではない。

人は歳をとるほど、過去が重たくなり、未来は軽くなっていく。

50歳の社員にとって、引きずっている過去の箱の中には、社会人歴約30年分もの経験が詰まっている。それに対して未来の箱は、仮に定年が60歳だとしたら10年分の容量しかない。そんな時、「今」の答えを出せと言われれば、情報がたくさん詰まった過去の箱からヒントを導き出そうとしてしまうだろう。

一方で25歳の社員にしてみたら、過去の箱には数年分の情報しかない。しかし未来の箱には永遠とも言えるだけのサイズがある。無意識のうちに、未来の箱の中にいろいろな予測や変化の情報を入れ込んでいるだろう。将来的な地球環境の話もあれば、AIの未来のような情報も含まれている。つまり、圧倒的に未来の箱が重たいのだ。そうなれば、「今」の問いを考える時には、未来の箱からヒントを探そうとするだろう。

どちらが正しいということを言いたいわけではない。

一般論として、私たちにはそういう傾向があるということだ。

それを踏まえた上で、ベテランはベテランなりに、若手は若手なりにうまくバランスを取っていく必要がある。

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