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点眼薬「目薬は『捨て時』が肝心」平松類(二本松眼科病院副院長)

文・平松類(二本松眼科病院副院長)

平松類医師

平松氏

目薬を安心して使うための重要なポイント

眼科で処方される目薬(点眼薬)は大きく分けて、抗菌薬、消炎薬、ステロイド薬、抗アレルギー薬、ドライアイ薬、白内障予防薬、緑内障治療薬といった種類があります。

このうち白内障予防薬だけが「予防目的」で、それ以外はすべて「治療目的」です。優に100を超える銘柄の中から、症状に合わせて、時に複合的に薬を処方することになります。

目薬の使用にあたって、もっとも注意すべきはステロイド薬です。

花粉症などのアレルギー疾患で目の症状が出た際、病院で抗アレルギー薬かステロイド薬の目薬が出されることが多いのですが、抗アレルギー薬は効き方がマイルドなのに対して、ステロイドの点眼薬は切れ味がよいのが特徴です。そのため、ステロイド薬を希望する患者さんは少なくありません。

ただ、ステロイド薬には眼圧を高める副作用があります。よく考えずに漫然と使い続けていると、緑内障や白内障などになるリスクもある。まず抗アレルギー薬を使ってみて、効果が足りないなら用心しながらステロイド薬を検討する、というのが安全策となるでしょう。

ドライアイ薬、白内障予防薬、緑内障治療薬については、長期的な使用を前提とした薬なので、安心して使い続けてください。

また、主に目やにの症状に、抗菌薬が出されます。内科領域ではよく「抗菌薬を使いすぎると耐性菌ができるので要注意」という話が出ます。ただ、眼科においては、過度に使用しなければ、そこまで心配する必要はありません。

目薬を安心して使うため、いくつか重要なポイントがあるので、順に挙げていきたいと思います。

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1つ目は、薬の「やめ時」です。ステロイド薬にしても抗アレルギー薬にしても、「眼科以外で出された目薬」を使うのは長くても2週間までにしてください。花粉症で皮膚科や耳鼻科にかかった際、目薬をついでに処方されることがあります。使ってみて、2週間の時点で症状が改善されていなければ、眼科専門医を受診すべきです。

内科で処方される内服薬は、出された薬を「飲み切る」のが基本ですが、目薬については最後まで使い切る必要はありません。一定期間使ってみて、眼科医が「もうやめましょう」と判断したら、たとえ残っていても躊躇せずに捨てる、という考え方を持ってください。使い続けたからと言って、元のアレルギーが治るわけでもありません。

つけ加えると、ボトルに書かれている「消費期限」は、開栓しない場合の期限であって、一度キャップを開けたら、その日から1カ月間が消費期限となります。1年前に出された抗菌目薬を後生大事に冷蔵庫にしまっている人もいますが、そんな目薬には当然のことながら殺菌効果などありません。逆に菌を目にさすことになりかねない。使い残しに未練は不要です。

さす回数を増やすと危険

2つ目は「薬に頼りすぎない」ということ。ドライアイの場合、環境因子が非常に大きいので、目薬だけで症状が治るわけではありません。目薬はあくまで状況改善のお手伝いであって、根本的に治すには「3つのコン(パソコン、エアコン、コンタクトレンズ)」の使い方を見直す必要があります。

そうした生活環境の改善をせずに目薬をいくらさしても、ドライアイは改善しません。中には「ドライアイの目薬をいくらさしても治らないから、自分はドライアイではないんじゃないか」と言い出す人もいます。目薬に頼り切らず、自分の生活環境も見直してみましょう。

3つ目は、「さす順番」です。複数の目薬を処方されたときには、ぜひ順番に気をつけてください。目薬は順序を間違うと、期待する効果が得られないことがあるのです。こうしたことは眼科医や薬剤師も教えてくれないことがあるので、知識として持っておくとよいでしょう。

目薬のタイプは、さらっとした液性、粉が混じって濁った懸濁性、ドロッとしたゲル化剤に分かれている。複数の目薬をさす時、粘性の高い目薬を最初にさしてしまうと、後から使う目薬がうまく浸透せずに弾かれてしまうのです。ですから、さらっとしたタイプのものを、最初にさすようにしてください。

例えば、ドライアイとアレルギーを一緒に発症していれば、アレジオン、ヒアレイン、ムコスタの3剤を出されることがあります。使用の順番としては、最初にさらっとしているアレジオン、次は目に滞留させる必要のあるヒアレイン、最後に粘性の高いムコスタとするのがよいでしょう。

もしうっかり懸濁性やゲル化剤の目薬を先にさしてしまったときは、次の薬をさすまでに5分以上の間隔をあけてください。

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