【26-国際】【覚醒した中国】中国共産党が「二つの百年」で確立した「少数エリート独裁」の脅威|富坂聰
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【26-国際】【覚醒した中国】中国共産党が「二つの百年」で確立した「少数エリート独裁」の脅威|富坂聰

文・富坂聰(拓殖大学海外事情研究所教授)

他国と中国の認識のズレ

2020年、日本にあふれた中国の話題は新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)と米中対立に集約される。

だが中国国内の視点は少し違う。とくに中国共産党は結党百年を控え、その治世の実績を誇る「二つの百年」(共産党結党百年と建国百年)目標の実現が最重要政治課題で、新型コロナも米中対立もその阻害要因と受け止めた。結党百年には「全面的な小康社会の実現」(すべての国民がある程度豊かさを実感できる社会)を掲げ、「国内総生産(GDP)を2010年から倍増」と「貧困撲滅」が明示された。前者は周知の如く新型コロナで目算が狂い、武漢市を封鎖した時点で達成は絶望的(今年5.7%成長が必須であった)となった。党には忸怩たる思いが残った。

感染拡大の初期、メディアは「中国の対応の遅れ」を責めたが、「二つの百年」目標の重みや面子を重視する党の体質を考えれば、都市封鎖の決断が容易でなかったことは明白だ。かつての中国であればノルマに拘泥し、封鎖のタイミングを逸していたはずだ。

党中央が国民の命や健康を面子より優先した事実は中国の未来を占う上で見逃せない変化だが、そこに注目したメディアは少ない。情報隠蔽と初動ミスというストーリーがそれを許さなかったからだ。

情報が少し整理されたいま、中国責任論を裏付ける資料も出されず、「中国ウイルス」と口にするのはトランプ政権の一部だけとなっても世界が中国を見る厳しい目に変化はない。報道の恐ろしさだ。

だが第2四半期には習政権が感染を抑え込みG20で唯一GDP成長率をプラスに転じさせたのは事実だ。当然、習近平は勝利宣言するが世界はそれに冷淡だ。このパーセプション・ギャップは今後の中国に影を落とすはずだ。

他国との認識のズレは中国が常に抱える問題である。いま習近平が注力する社会主義の再評価にもそれは表れている。

社会のIT化に成功し、デジタル経済を根付かせ、先端分野をリードする企業を多く生んだ中国の成功は、市場経済の導入と西側経済圏との融合だけで説明できるものではない。的を射た長期計画や産業の保護・育成計画など政治の力が不可欠だった。故に中国が、「中国モデル」の評価が社会主義を見直す契機と考えるのも不自然ではない。将来、AIと結びつき計画経済が精度を高めれば、ある種の「デジタルレーニン主義」である。

実際、アメリカが警戒するのも“党の指導”である。「メイド・イン・チャイナ2025」を公然と批判し、「いずれ世界は中国のルールに呑み込まれる」と世界に警告したのは、その証左だ。

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