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武田徹の新書時評|コロナが浮き彫りにした「東京問題」

評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。

あれは東京問題――、菅義偉首相は官房長官時代に東京都の新型コロナウイルス感染者急増について、23区の保健所を制御できない都庁の問題だと突き放すように述べた。ただ、都の肩を持つわけではないが、人口が集中し、通勤・通学などの移動の機会が多い東京には感染症が広がりやすい条件がそもそも揃っていることは確かだろう。

そんな過密都市・東京は一朝一夕に作られたわけではない。秋山武雄『東京レトロ写真帖』(中公新書ラクレ)は、洋食店主の著者が撮り続けてきた写真にエッセーを添えた新聞人気連載をまとめた内容で、前作『東京懐かし写真帖』につぐ第2作だ。手に取って目を見張らされたのは江東区豊洲から東京湾越しに東京タワーを遠望する1961年の写真だった。すっくと立つタワーが足元から見える。64年五輪を機に東京の大改造が始まり、高層ビルが建ち始めてその足元は隠されていったはず。その後、2020年五輪開催を旗印のひとつとして臨海部の開発にも拍車がかかった。今やタワーマンションや商業施設が建ち並んだ豊洲で同じ場所から東京湾が見えるかどうか。

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