
【96-教育・科学】【スーパー子育て母親の主張】 「自立」よりも「自活」 子供には「読み書き計算」の徹底を|佐藤亮子
文・佐藤亮子(浜学園アドバイザー)
能力とは学歴ではない
私には子供が4人おり、全員が東京大学医学部に進んだ。これは珍しいということで子育ての本を出版した。評価は賛否両論だった。その意見を聞いて、私は世の中の子育ては少し間違っているのではないかという疑問がわいた。子供は学ぶことが大好きなはずなのに、なぜ勉強嫌いな子が多いのか? なぜ親は子育てに疲弊しているのか? 私はやり方を変えるだけでどの子も伸びると信じ、今は「佐藤ママ」として講演会等をしている。
子供は、必ず大人になる。そして、時がくれば親から離れて自分の力で生きていく。人生は長い。誰もが生き生きとやりがいをもって自分の人生を全うしたいと思う。会社の歯車として使われるのではなく、自分の意思で生きていくためには、納得のいく生きがいとなる仕事につくことが必要だ。仕事をして多少なりとも人から感謝されると、人間はそれだけで元気よく生きていける。子供が大人になって仕事を選択する時に、選択肢は広い方がいい。子育てをしている親のするべきことは、子供が広い選択肢を持つことができる能力を育てることだ。よく勘違いされるが、その能力とは学歴ではない。学歴は生きるためのツールの一つと考えるべきである。もっとも、その学歴を得るために、必死で身に付けた学力は、仕事を選択する際に大きな武器となる。
すべての親は、子供たちに幸せに生きていってほしいと願って子育てをしている。しかし、大変だった今年に限らず、この世の中で生きていくのはかなり難しい。どのように子供を育てようかと考える時、多くの親は子供を早く「自立」させたいと思うのだ。大きくなった子供が独り立ちをして生きていく姿を想像する「自立」という言葉。では「自立」とは何?と聞くと、乳児を持つ親は「早くおむつを取りたい」といい、幼稚園児の親は「早く自分で靴下を履けるように」という。小学生の親は「次の日の準備を自分でする」ことという。手の掛かる子供が自分のことは自分でするようになることを願っている気持ちは分かる。しかし、「おむつ」「靴下」「準備」は、年齢が上がれば誰でもできることなのだ。なるべく早く親の手を離すのではなく、なるべく手をかけるのが子育てと呼ぶべきものだと思う。私は、「自立」という言葉は非常に曖昧だと感じ、私自身の子育ての目標は「自活」とすることに決めた。自らの手で稼いで食べていける子に育てるということである。「自立」となると多方面での解釈が考えられるので、子育ての目標にすると焦点がぼやける。何かをよりよく達成しようと思う時、目標はシンプルでなければならない。「稼ぐ」ということは、使える大人に育てることだ。それは、確固たる学力、専門知識、総合的な人間力を兼ね備えていることとなり、子育ての目標は具体化する。
2020年は確かに人類の大きな節目の年と言えるだろう。これまで、保護者から「先の見えない時代を生きるためにはどのような子育てをしたらいいのか?」とよく質問された。この質問は、AIの進歩を心配してのことである。しかし、今年はそれにコロナが加わった。今のコロナの時代はより一層先が見えないということになるが、よく考えてみてほしい。今まで、はっきりと先が見えていた時代があっただろうか? 少し考えてみればわかるが、実はいつの時代も先は見えなかったのだ。ということは、見える自分の手元のことを着実にやりながら前に進むしかないわけである。