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シミュレーション 令和X年 戦争への道【朝鮮半島有事】日韓GSOMIA破棄のツケ第2次朝鮮戦争勃発

文・潮匡人(評論家)

 令和元年8月22日、韓国大統領府は日韓GSOMIA(軍事情報包括保護協定)の破棄を決定。これにより、同年11月23日午前零時をもって、日韓GSOMIAは発効から、たった3年で失効した。当時、韓国政府は「米国は理解した」と説明したが、米国政府は事実関係を完全否定。さらに米国務長官が、「disappointed(失望した、裏切られた)」、米国防総省も「強い懸念と失望を表明する」と声明した。

 そもそも「GSOMIA」は、米国が各国と結んでいる秘密軍事情報の保護に関する2国間協定の総称である。日本は米国の他、イギリスやフランス、オーストラリア、NATO(北大西洋条約機構)とも署名、締結している。韓国も多数の国や地域と署名、締結している。そうしたなか、日韓のGSOMIAが、言わば“ミッシング・リンク”となっていた。そこで2016年、米国の強いリーダーシップのもと、日韓GSOMIAが締結された。それを韓国が一方的に破棄した。米国にしてみれば、まさに「裏切られた」との思いであろう。

 漁父の利を得たのは、日韓GSOMIAを「戦争協定」と非難していた北朝鮮である。韓国が日本に破棄通告した翌日、「新たに開発した超大型ロケット砲」を発射。日米韓の連携に揺さぶりをかけた。ロシアも同日、バレンツ海(北極圏)で原潜によるSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)発射実験を行った。

 事態は北朝鮮の狙いどおり進んだ。それまでも北は「新型戦術誘導弾」、「大口径操縦放射砲」(多連装ロケット砲)、「すぐれた戦術特性を持つ新兵器」を次々と発射。だが、米大統領は国連安保理決議違反を咎めることもなく「すべて短距離」と、米本土に届く長距離の大陸間弾道ミサイル(ICBM)でなければ、問題視しない考えを示し続けてきた。

 本来なら、中短距離ミサイルの射程下にある日韓両国が連携すべき事態だったが、それは叶わなかった。いわゆる旭日旗(自衛艦旗)問題に始まり、海自機への火器管制レーダー照射、そして日韓GSOMIA破棄。もはや日韓は軍事面でも鋭く対立していた。

 振り返れば2014年12月、日米韓は「北朝鮮による核及びミサイルの脅威に関する(中略)三者間情報共有取決め」(TISA:Trilateral Information Sharing Arrangement)に署名した。ただ、この取決めでは日韓とも米国防総省をハブとして経由しなければならず、情報共有上の大きなコストが発生していた。

 令和元年の日韓GSOMIA破棄により、再び、このコストが発生した。再度ハブとなった米国は、いちいち日韓に供与する情報を精査しなければならず、迅速に情報提供できない。平時の共同演習にも支障が出た。有事においては、なおさらである。

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