
【88-スポーツ】東京五輪延期 現役オリンピアンは何を考えているか|大迫傑
文・大迫傑(東京五輪マラソン代表選手)
新たなチャレンジが出来るいい機会
東京オリンピックは(新型コロナウイルス感染拡大の影響で)2021年に延期となりましたが、気持ちの切り替えは早くできたと思っています。
マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)の開催によって従来と比べれば代表選考も改善されたとは思いますが、まだ不完全なシステムゆえに緊張感のある試合が増えました。(東京オリンピック出場の内定を勝ち取った)3月の東京マラソンの後、東京オリンピックのある8月まで気持ちが続くのかなという心配も僕のなかでありましたから、1回リラックスする時間をつくれるんだなと前向きに捉えることができました。「あと1年半ある」とホッとした部分もあります。
時間ができたことで新たなチャレンジが出来るいい機会だなと思い「シュガーエリート」という新チームを始めました。
まずは基準記録を満たしている学生の中長距離選手を集めて、8月17日から1週間の日程でショートキャンプを実施しました。僕のときもそうでしたが、たとえば早稲田は早稲田、東海は東海で練習します。それぞれの大学で練習を積むのは悪いことではありません。ただ、本当に世界を目指すなら強い選手、意識の高い選手を集めてしっかり強化するということをやっていかなくちゃいけない。そういう思いが僕のなかにあります。
(東京オリンピックを1年後に控えた)僕がどういう練習をしているかを知ってもらいたい、背中を見せていければいい、と。今の経験をシェアしていくことが若い選手たちのモチベーションになるとも考えました。
アスリートを辞めてから指導者になる道がメインストリームだとは思います。しかしこのような試みは引退してからではできません。だからこそ僕にとっては貴重な経験になっています。
まず僕がやっていることをあえて彼らに合わせず、生の感じで見せました。いいところもそうでないところも、とにかく見てもらうことが大事。それを彼らが自分のなかに落とし込み、これからの練習に活かしてもらえばいいわけです。
僕の大学時代も今の大学生も、変わりはありません。世界と戦いたいという選手は上を見てやっているんだなと感じました。そのコミュニティがないだけであって、一つチャンスを与えるだけで伸びていくなという実感をあらためて持つことができました。