見出し画像

バイデンよ、中国には「日米統一戦線」で対抗せよ|M・カンター(元米国通商代表)

かつての対日強硬派が中国への対抗策を明かす!/文・ミッキー・カンター(元アメリカ通商代表)、聞き手・米山伸郎(日賑グローバル株式会社代表取締役社長)

<この記事のポイント>
▶︎トランプからバイデンへの政権移行の懸念てんは安全保障上の情報の共有がなされていないことと、COVID−19への対応準備が取れていないこと
▶︎そもそも、トランプ政権に『対中政策』として筋の通った首尾一貫したものは何もなかった
▶︎最も重要なのは、日本を中心とする同盟国、友好国と共通のアジェンダをもって中国に対処していくこと

画像2

カンター氏(左)と米山氏(右)

バイデン政権の対中政策はどうなるのか?

トランプ政権は中国への圧力を強めてきた。中国製品への関税率引き上げや、ファーウェイ、ZTEなど中国IT企業の米政府調達からの排除といった措置を講ずると、中国側も報復関税を設定し、「米中貿易戦争」に発展している。

さらに武漢での新型コロナウイルス発生についての中国政府の情報共有の遅れや、新疆ウイグル自治区での人権問題、香港への抑圧、中国人留学生や研究者を通じた米国ハイテク企業や軍事機密情報へのスパイ行為などに対し、トランプ政権は次々と制裁を具体化させてきた。もはや貿易の範囲を超えて広く経済と軍事に及ぶ「米中覇権戦争」の様相を呈してきた。また、対中制裁は諸外国や日本企業にも及ぶことから、米中冷戦時代が到来したともいえる。

一方の中国側も、アメリカ攻略の布石を打っている。11月に中国を含む15カ国で署名したRCEP(地域的な包括的経済連携)を通じ、対中貿易・投資の拡大を目指す。さらに習近平国家主席はアメリカが離脱したTPP(環太平洋パートナーシップ協定)への参加意欲も示した。

ミッキー・カンター氏(81)は民主党政権のビル・クリントン大統領時代、1993年から97年に米通商代表部(USTR)代表を務め、96年から97年の間は商務長官も兼務。タフ・ネゴシエイターとして日本の政財界にその名を知られた。同氏の教え子らは、バイデン政権の政府高官などに就く予定である。はたしてバイデン政権の対中政策はどうなるのか?――カンター氏に見通しを聞いた。

画像5

同盟国との「統一戦線」

――まずは選挙結果についての認識をお聞かせ下さい。

「今回の選挙は、民主党と共和党の痛み分けという印象だ。

民主党側が期待していたブルーウェーブ(ホワイトハウス含め上下両院での民主党の地すべり的勝利)は起こらなかった。大統領選では民主党が勝利したものの、議会選挙では共和党が思った以上に善戦した印象が強い。

注目は、副大統領となるカマラ・ハリス上院議員だ。私が住んでいるカリフォルニア州で検事総長を務めていた非常に優秀な人物で、とても期待している」

――現時点(11月18日)でトランプ大統領は敗北を認めていませんが、政権移行は平和裏になされるのでしょうか?

「トランプ大統領は敗北を認めておらず、本来であれば政権移行チームに提供される移行準備のための運営予算が渡されておらず、また移行準備作業で使う連邦事務所のカギすら渡されていない状況だ。個人的にも、とても心配している。

とくに懸念しているのが、安全保障上の情報の共有がなされていないことと、COVID−19への対応準備が取れていないことだ。

とりわけ新型コロナウイルスには1100万人を超えるアメリカ人が感染し、25万人もの人が亡くなっている。それにもかかわらず、トランプ政権はその対応にリーダーシップをほとんど発揮できていない。全くひどい状態だ。

ワクチンの配給についても、バイデン政権が円滑かつ途切れなく対応できるように、トランプ政権から早急にブリーフィングがなされるべきだがそれもなされていない。

もっとも、敗北を認めていないトランプ大統領も、さすがに2021年1月20日の正午までにはホワイトハウスを退去することは間違いないと思っている。

もしこのまま居座り続けるなら、まずはワシントンDCの法律が適用され、住居侵入容疑でトランプ大統領が逮捕されるだろう(笑)。さすがのトランプ大統領も、そこまで恥ずべき行為は行わないと信じている」

――そのトランプ政権の対中政策について、どう評価されますか?

「まず指摘しておくが、トランプ政権に『対中政策』として筋の通った首尾一貫したものは何もなかった。また財務省、商務省、USTR、国務省などの関連省庁間でも、何ら調整された政策は存在しなかった。そもそも、明確な『中国政策』などと呼べるようなものはトランプ政権にはなかったのだ。

また、アメリカが中国に物申すときに、日本やEUを含めた同盟国や友好国との連携や調整もなかった。トランプ大統領は『アメリカファースト』と言うが、私の目から見れば『アメリカアローン』であったというのが偽らざる印象である。世界の友人も失ってしまった。

中国との間に存在する懸案は、貿易だけではない。南シナ海の問題、人権問題、知的財産権の問題など、安全保障と外交の多岐にわたっており、交渉すべき幅広い分野のロングリストがあるはずだ。バイデン政権となれば、一つ筋の通った確固たる中国政策をとりまとめ、友好国や同盟国と統一戦線(United Front)で中国に圧力をかけるものと期待している」

画像3

トランプ大統領

超党派でまとめるバイデン

――ではバイデン政権は、就任直後から中国関連の問題に取り組むのか? あるいは別の問題を優先するのでしょうか?

この続きをみるには

この続き: 3,343文字 / 画像3枚
この記事が含まれているマガジンを購読する
月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に幅広いテーマの記事を配信しています。政治家や経営者のインタビュー、芸能人の対談、作家のエッセイ、渾身の調査報道、一流作家の連載小説、心揺さぶるノンフィクション……月額900円でビジネスにも役立つ幅広い「教養」が身につきます。

文藝春秋digital

月額900円

知と教養のプラットフォーム。一流の作家や知識人、ジャーナリストによる記事・論考・ルポルタージュなどを毎日配信。執筆陣のオンラインイベントも…

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
文藝春秋digital

記事へのご意見・ご感想をお待ちしています。「#みんなの文藝春秋」をつけてご自身のnoteにお書きください。編集部がマガジンにピックアップします。皆さんの投稿、お待ちしています!

ありがとうございます!
1
月刊誌『文藝春秋』の特集記事を中心に、一流の作家や知識人による記事・論考を毎日配信。執筆陣のオンラインイベントも毎月開催中。月額900円で記事読み放題&イベント見放題のサービスです。