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『岐路の前にいる君たちに』著者・鷲田清一さんインタビュー

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鷲田清一氏

本書は、筆者が大阪大学総長(2007年〜2011年)、京都市立芸術大学の理事長・学長(2015年〜2019年)を務めた計8年間の式辞集だ。

「式辞を述べるのは、学長職のなかでも特に重い仕事でした。何を語るべきか、1年中考えていましたね」

哲学者である氏が、学生たちに「言葉を贈る」ことの意味を問いながら織り上げられた言葉たちは、「聴く」のではなく「読む」ことで別の味わいを生む。

例えば、「教養」という言葉。

〈教養とは、一つの問題に対して必要ないくつもの思考の補助線を立てることができるということ〉

〈自分が何を知っていて何を知らないか、自分に何ができて何ができないか、それを見通せていることが「教養」というものにほかなりません〉

「『教養』という一語では、ありふれていて、心に届かなくなっています。教養とは、自分の専門性を補完するためのものではなく、市民社会の中で生かすためのもの。それを伝えようとしました」

社会生活においては「リーダーシップ」以上に、優れた「フォロワーシップ」が重要だとも語る。

「私は、ワーク・ライフ・バランスという言葉が嫌いでしてね(笑)。仕事と暮らしを対比するのではなく、会社でも、地域でも、パブリックな存在としての自分を磨いてほしい。よく式辞で言われるのは『リーダーシップ』の重要性でしょう。でも、最後尾にいる人こそが、リーダーが見落としたものや、集団からこぼれ落ちそうな人が見える。全体を見通して皆が生き延びられる方法を考える、そんな優れたフォロワーシップこそが本当の意味でのパブリックな視線だと思います」

現在70歳。現代を生きる学生たちに、ずっとある思いを抱いてきたという。

「8年間、式辞で伝えたかった自分の思いはずっと変わりませんでした。それは、『こんな形であなた方に時代のバトンを渡すことになって、ごめんなさい』という気持ち。本当はもっと一人ひとりにチャンスがある世界を渡したかった。これからの時代は人類が経験したことのないような不定の時代です。ですから、せめて学生たちには、しんどい時にも生きながらえるための智恵を持って旅立ってほしい。そんな思いで言葉を贈りました」

新型肺炎に端を発した一連の自粛のため、異例の形で人生の節目を迎えざるをえなかった人びとの心に、そっと小さなあかりを灯してくれるような書である。

(2020年5月号)


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